また、エネルギー安全保障の観点からの意見として、中国製タービンに米国の補助金を使うことは、風力発電によってせっかく脱石油が実現したとしても、中東からの原油輸入が中国からの風力タービン輸入に置き換わっただけで、米国のエネルギー安全保障は全く改善されないとの指摘もあります。
一方、以前紹介しました中国のグリーン政策に対しても、中国のクリーンエネルギー産業の成長とともに他国からの非難が大きくなっています。
中国の補助金はダンピングの原資になっている?
中国政府の自国クリーンエネルギー産業支援の補助金などが、海外市場へ輸出される太陽電池や風力タービンなどの中国製品のダンピングの原資となっているとの批判です。
実際に、全米最大労働組合の1つである全米鉄鋼労働組合(United Steelworkers Union)は、中国政府が不当に政府補助金を中国製クリーンエネルギー製品の輸出促進の目的で利用しており、世界貿易機関(World Trade Organization)の規則に反するとの申請を米国政府に行い、2010年10月に米国通商代表部(United States Trade Representative)が調査に乗り出すことを表明しました。
確かに、今回各国政府によってクリーンエネルギー産業に投入された資金は莫大なもので、その効果は期待されます。
しかし、その一方で、あまり保護主義の色彩が強くなりすぎると、グローバルビジネスとしてのクリーンエネルギー産業そのものの拡大に水を差しかねません。政府の産業介入は両刃の剣でもあるのです。
ここで、米国政府の経済救済予算によるクリーンエネルギー産業支援に対しての評価を紹介します。
今回の経済救済予算には賛否両論があります。2008年後半に発生した世界同時不況の結果、2009年米国では未曾有の信用不安が発生しました。
連邦預金保険公社(Federal Deposit Insurance Corp: FDIC)によりますと、米銀による貸出額は1942年以来の最低レベルを記録し、ワシントン・ミューチュアル(Washington Mutual)など大手を含む米銀の倒産件数は2008年9月以来279件に上り、その間に銀行資産も4.5%縮小しました*31。
この金融収縮によって、金融機関からの風力発電などのクリーンエネルギープロジェクトへの投資や融資が一斉にストップしました。