ものをつくる仕事っていうのは、「ごまかし」が利かない商売だ。品質を謀(たばか)れば、いずれ評判が落ちて、世間様からは見放される。

 おまけに、いつも技術革新をしていなくてはならない。時代の変化を読んで柔軟に対応していなければ、変化に乗り遅れてしまう。だから立ち止まってはいられない。

 おれは金型だけでなく、工場の中にいくつもの製造機械を組み合わせたプラントをつくり、一時、稼いだら、そのプラントを丸ごと一式、欲しいっていう会社に売ってきた。

 まだ、儲かるうちにプラントを売るのはなぜかって? 技術ってのは水ものだ。やがて、その価値はぜったいに下がる。だから価値のあるうちに売って、また新しい開発に取り組むというのが、ウチの流儀だ。

 つまり、経営も人間の身体と同じだってこと。食べたらどんどん出さないと新陳代謝が悪くなって、身体が調子悪くなるってもんだ。

儲かるサイクルに甘んじていてはいけない

 まだ儲かる仕事のプラント一式を売り渡すということは、今までの仕事と決別し、退路を断つことだ。だから、それなりに覚悟がいる。

 だけど、頭の中をふさいでいた今までの仕事が一気に消されるから、脳みそのスペースも広く空く。新たに考えるスペースが生まれるんだ。だから、再び何かに取り組む余裕が生まれて、それに向かって走る馬力が湧いてくるんだよ。

 人間はとかくラクな方へと進みたがる。ぬるま湯に浸かっていると心地がよくて、変化を好まない習性がある。儲かる仕組みをつくると、たいして考えなくても、金には苦労しなくなる。儲かるサイクルの中にいれば、努力しなくても金を得ることはたやすい。

 でも、おれは、たいしたことをしないで下の者に汗をかかせて、自分はカネ勘定ばかりして汗をかかないで儲けるやつってのが嫌いなんだよ。