福島第1原発事故、東電元会長ら3人を強制起訴

福島県大熊町の福島第1原子力発電所(2015年10月9日撮影)。(c)AFP/TOSHIFUMI KITAMURA〔AFPBB News

 東日本大震災から、来週で5年になる。震災と津波の犠牲者は1万5000人を超えるが、もっぱら話題になるのは原発事故だ。私も今週、福島第一原発事故に見学に行ったが、久しぶりに見ると、発電所というより石油貯蔵基地のようだ。

 1000本のタンクが林立し、その容量は100万トン。これを毎日7000人の作業員が汲み上げ、水処理して貯水しているが、その「汚染水」は普通の地下水や雨水で、もともと飲んでも大丈夫だ。なぜこんな不毛な作業をしているのだろうか?

飲んでもいい水を7000人で汲み上げる膨大な作業

 東京電力は「国の方針に従っている」というが、国を代表する原子力規制委員会の田中俊一委員長は2015年2月、貯水タンクの作業員が転落して死亡したとき、「世論に迎合して人の命をなくしては元も子もない。東電は海洋放出に取り組んでいただきたい」と批判した。

 しかし東電の「親会社」である原子力損害賠償・廃炉等支援機構は動けない。汚染水のトリチウム(三重水素)濃度が、環境基準を超えているからだ。これは自然界にも大量にある水素の放射性同位体で、水道水にも含まれている。水として存在するので人体にも魚介類にもほとんど留まらず排出される。

 だから薄めて流せばいいのだが、それを止めているのは法律でも環境基準でもなく、地元の漁協だ。彼らは「福島の魚は危険だという風評被害につながる」と反対しているが、原発の近海は操業禁止なので魚とは無関係だ。要は補償金をよこせということだろう。

 ただ廃炉の作業は、以前よりかなり効率化された。多くの作業員は防護服を着ないで、平服に手袋などをつけて作業できるようになったが、線量の高い現場には短時間しかいられないので、7000人も必要になる。これは環境基準で、作業員の被曝線量が年間250ミリシーベルトに制限されているためだ。