人類史の大きな流れを展望すれば、私たちはより自由な社会への道を歩んできた。女性や障がい者が社会で活躍する機会が拡大していることは、自由な社会への変化を象徴している。
もちろん改善が必要な問題はたくさんあるが、社会をよりよくする能力が私たちに備わっていることに、もっと希望を抱いて良いと思う。その能力とは、ひとことで言えば「人間力」だ。
人間力とは何か、そしてそれはどのようにして人間に備わったのか。
人間力とは何か
1月15日、私は人間力について考えをめぐらしながら、ある会議に出ていた。その会議とは、博士課程教育リーディングプログラム・オールラウンド型7大学シンポジウムである。
博士の学位に加え、人間力や俯瞰力を身につけたグローバルリーダーを育てるという難題に取り組む7大学の教員と学生が集まり、経験を交流し、課題について討論した。
各大学の発表に先立ち、楽天取締役常務執行委員の杉原章郎さんが「グローバル人材・リーダー人材に期待するもの」と題して基調講演をされた。
TOEIC800点を目指すチームと850点を目指すチームでは、後者の方が早く800点を取ったという経験を紹介され、高い目標を設定することで人間は成長できることを指摘された。さらに、イノベーティブな人材の育成・創出にはイノベーションに取り組みたいと思える環境が大事であり、本人のチャレンジを後押しする制度を工夫しているというお話には、とても納得がいった(お話の概要はこちら)。
杉原さんがリーダー人材に期待される「人間力」の内容はかなり具体的だ。何よりもまず実行力、つまり高い目標を設定し、その目標を何がなんでも達成する能力だ。次に創造力、つまり自分で目標を設定して新しい価値を創造する能力だ。3番目は、明言はされなかったが、やる気を引き出す能力だと理解した。幹部になれば、社員により高い目標へのチャレンジをけしかけ、その目標達成の背中を押す能力が求められる。
自由こそ未知の可能性を開く鍵
7大学の大学院生による活動報告はどれもすばらしかった。実行力・創造力を持ち、チームのやる気を引き出して主体的に課題に取り組んでいる大学院生の達成に、会場からも高く評価する発言があった。
シンポジウムの最後にはパネルディスカッションが行われたが、壇上のパネラーはみな教員だったので、議論は教員目線に偏りがちだった。たとえば、どうすれば社会や企業が求める博士人材を養成できるか、というような議論だ。
これに対して、フロアの名古屋大院生から「まるで学生が商品のような議論だ。(特定の枠組みに)学生をあてはめるのではなく、未知の可能性に学生を開いていくことが大事だ」という意見が出たので、私は大きな拍手を送った。
【訂正】当初のタイトル『「自由意思」がチンパンジーを人に変えた』は、チンパンジーが進化してヒトになる、といった誤解を招くものでした。お詫びして訂正いたします。