「今、世界のアート関係者は東京ではなく北京に集まっています。アジアにおけるアート市場の中心は、日本や韓国を通り越して中国なんです」

 世界のアート市場の現状をこう語るのは、東京・銀座にある「東京画廊」のオーナー、山本豊津(やまもと・ほづ)氏である。

東京画廊のオーナー、山本豊津氏

 東京画廊は、豊津氏の父親である山本孝氏が1950年に開設し、日本で初めて現代アートを専門に取り上げた日本屈指の画廊だ。2002年には、弟の田畑幸人氏が中国・北京にギャラリー「B.T.A.P.」(ビータップ)をオープンし、東京と北京を拠点にアジアの現代美術を紹介している。

 経済にとどまらず芸術文化の領域においても中国の躍進が目覚ましい。山本さんの著書『アートは資本主義の行方を予言する』(PHP新書)を読むと、中国が経済成長とともにアート市場における存在感を高めている様子がよく分かる。

 アーティストの年間落札合計額を見ても、中国の勢いがはっきりと表れている。本書によると、2011年は中国の張大千と斉白石というアーティストがアンディ・ウォーホールやピカソを抑えて1位と2位を占めた。しかも上位10人のうち6人が中国人アーティストだったという。