1.中国漁船・尖閣付近領海内接触事件~中国、「海洋権益」で主導権狙い強硬姿勢に
沖縄県・尖閣諸島付近で日本の海上保安庁巡視船と中国漁船が衝突した事件で、中国は9月中旬に予定されていた東シナ海ガス田開発の条約締結交渉を延期した。
さらには、戴秉国・国務委員が丹羽宇一郎・駐中国大使を未明に呼び出し、日本側に漁船・漁民の解放を迫り、さらなる対抗措置を打ち出すことを示唆するなど強硬姿勢に転じている。
2.日本を取り巻く戦略環境~米国の凋落と中国の台頭
米国は今後「ジリ貧」になり、もはや世界の警察官の任を負えなくなる時代が来るのではいかという懸念がある。
この懸念は歴史的な前例に由来するものだ。ベトナム戦争では時価換算で65兆円の金を使い、これにより米主導のブレトンウッズ体制が壊れ、金本位制と固定相場制を放棄した。
さらにはニクソン・ドクトリンが打ち出され、「自分の国は自分で守れ」と同盟国を突き放すような政策まで打ち出した。
この前例を下敷きにして米国の将来を考えてみよう。アフガン・イラクでは既に95兆円の戦費を使い、年内には100兆円にも迫るものと見積もられている。
アフガン・イラク戦費に加え、リーマン・ショックに端を発した金融危機により深刻な経済的ダメージを受けたが、今後米国が「ジリ貧」状態から抜け出せる確証はない。
8月末に公表された「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会(以下「新安保懇」とする)」報告書においても「米国の軍事的、経済的優越は圧倒的なものと見なされなくなりつつある。