経済財政諮問会議で、安倍首相が「携帯電話料金の家計負担軽減が大きな課題だ」として高市早苗総務相に料金引き下げの検討を指示したと報じられ、通信各社の株価が大幅に下がった。
「賃上げ要請」に続いて今度は「値下げ要請」と、安倍首相の統制経済好きは困ったものだが、確かに日本の携帯電話料金は世界的にみても割高だ。世界の主要都市のスマートフォン料金を比較すると、アメリカ、ドイツの次に高い。これが家計を圧迫し、他の家計消費は減っている。
地上波テレビの浪費している巨大な「空き地」
しかし通信料金を決めるのは通信会社であって、政府ではない。彼らが毎年3社合計で2兆5000億円も利益を出しているのは、同じ業者の寡占状態になって、価格を談合でつり上げているからだ。その原因は、新たに割り当てる電波がないからではない。電波は空いているが、役所が使わせないのだ。
2011年までテレビの地上波放送はVHF帯でやっていたが、デジタル化するとき、それをすべてUHF帯(470~710MHz)に移行することを総務省が決めた。この移行には1兆円以上のコストがかかるため、放送業界は反対したが、総務省は「2011年7月に電波を止める」と決め、放送業界に3000億円以上の補助金を出して停波を強行した。
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その結果、電波の止まったVHF帯はほとんど使われず、それを埋めるためのNOTTVは、1000億円近い累積損失を出して経営が破綻している(参考:「赤字の『マルチメディア放送』はなぜ続くのか」)。
さらにひどいのは、UHF帯だ。ここで使われる周波数はNHKと民放の7~8チャンネルなのに、13~52チャンネルの40チャンネルも割り当てられ、ほとんどが使われていない。例えば表1は茨城県のチャンネル割り当てだが、7チャンネルの中継局をばらばらの周波数に割り当てて40チャンネルもふさいでいる。
表の記号が中継局(G=NHK総合、E=教育、N=NTV、T=TBS、F=フジ、A=テレ朝、V=テレ東)、何も書いてない部分が放送局に割り当てられながら使われていない周波数(ホワイトスペース)だが、なぜこんなもったいない割り当てをしているのだろうか?