川内原発再稼働、「原発ゼロ」状態に幕

九州電力が公開した、川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉容器内に入れられる燃料棒(2015年7月7日撮影)。(c)AFP/KYUSHU ELECTRIC POWER 〔AFPBB News

 九州電力の川内原発1号機が8月11日、運転を再開した。これで2年近く続いた「原発ゼロ」状態は解消したが、今後どういうペースで運転が正常化するかは不明だ。野党は再稼動に反対しているが、安保法案のように「憲法違反だ」とか「違法だ」という声は聞こえてこない。

 今国会で野党は急に「立憲主義」に目覚めたらしく、安保法案にはやたらに「法の遵守」を求めているが、原発については「国民感情」を理由に原発の停止を求め、法律には何も言及しない。それはそうだろう。4年前に菅首相の思いつきで原発を止めた行政指導には、何の法的根拠もないからだ。

電力業界を混乱させる裁量行政

 今回の川内原発が定期検査のために止まったのは、2011年5月だ。通常なら18カ月後の2012年11月に定期検査が終われば運転を再開できるが、結果的には4年以上も止まったままだった。この直接の原因は原子力規制委員会が書類審査を許可しなかったためだが、これには法的根拠がない。

 定期検査そのものは2012年中に終わっていたので、書類審査して試運転(使用前検査)に入るのが通常の手続きだが、規制委員会の田中俊一委員長は個人的なメモで「新しい安全審査が終わるまで動かさない」と決めた。この「田中私案」は委員会でも決定されなかったが、そのまま全国の原発を止める唯一の根拠になっている。

 この影響で、原子炉等規制法によるバックフィット(設備の改善命令)の規定が曖昧なまま、すべての設備に新しい安全基準を適用する、世界にも例を見ない全面的なバックフィットが行なわれることになった。

 もちろん福島第一原発事故の原因になった電源喪失のような重大な欠陥は早期に改修する必要があるので、場合によっては一時的に運転を止めてバックフィットを行う必要があろう。日本では経済産業省が各電力会社に「ストレステスト」を要請し、福島第一と同じような欠陥は是正された。