1 はじめに

 「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」が国際共同開発による効率的な防衛力整備を提言し、武器輸出三原則の見直しを求めた。適切な提言と評価したい。

 安全保障は予想できないこと、あるいは予想を超える事態に備えることであり、その対処能力の裏づけには高度な科学技術力がなくてはならない。

高度な技術で予測困難を乗り越え、フォークランド紛争に勝利した英国

フォークランド紛争から25年 - 英領フォークランド

英領フォークランドの政庁所在地、スタンリー近郊に放置されたアルゼンチン軍のヘリコプター残骸〔AFPBB News

 英国は1982年、本土から8000マイルも離れた予想もしない戦場、フォークランド諸島での戦いを制した。

 その際、わずか1週間でシーハリア戦闘機に最新空対空ミサイルを装備するための改修を行い、C-130輸送機を空中給油機に改造、シーキング・ヘリコプターに対潜哨戒機用の捜索レーダーを急遽搭載して早期警戒機に仕立てるなどの技術的対応を迅速に行ったことが勝因の1つであった。

 国家の危機に防衛技術基盤がその真価を発揮した好例である。

 防衛費抑制の観点から防衛装備に関して「安くて良いものがあれば買ってくればよい」という風潮があるが、防衛力の本質を理解しない考えである。

 安価を理由にすべてを外国から導入すれば、装備品は揃うが、多様な事態や想定しない事態などへの対応能力である「技術力」が失われる。

 また、すべてを国産すれば、技術力はつくが所要の「装備」を揃えるのが困難になる。

 従って、防衛政策担当者の責任は「国産」か「導入」の二者択一ではなく、「装備」と「技術力」の総和である「防衛能力」を最大にする最適バランスを探すことである。

 懇談会の提言は「国産」「導入」の二元論から「国際共同開発」という「第3の選択肢」を提示するものである。