加えて、政策支援も大きな役割を果たします。このクリーンエネルギーと政府支援は1つの大きなテーマですので後章で詳細に述べますが、現状の米国連邦政府のソーラー補助政策の1つは Investment Tax Credit(ITC)と呼ばれる減税措置です。

米国の一部の州では2015年にソーラー発電のコストが電力料金を下回る

 具体的には、2016年までに稼働する条件でソーラー発電設置コストの30%分を減税するというかたちで、ソーラー発電の普及支援を行っています。

 製造コストの削減と政策支援によってソーラー発電コストが電力料金と同じレベルになる、いわゆるグリッドパリティ(Grid Parity)がいつ実現するかについては、日照時間や電気料金が地域や国によって異なるため一概には言えませんが、米ゼネラル・エレクトリック(GE)によりますと、米国の日照時間の長い州では2015年頃には太陽光発電のグリッドパリティが実現すると予測しています*10

 そうなりますと、ソーラー発電の利用が一気に拡大する可能性があります。

 米国エネルギー省(Department of Energy)の下部組織であるEIA(U.S. Energy Information Administration)は、毎年恒例の米国の長期エネルギー予測である Annual Energy Outlook(AEO)の2010年版を今年5月に発行しました。

太陽電池版ムーアの法則で製造コストが大幅に下がる

 AEO 2010によりますと、2008年時点で1380MWの米国ソーラー発電キャパシティ(太陽光・太陽熱を含む)は、標準ケースとして、2020年に1万1000MWに、2030年に1万2600MWに、2035年には1万4000MWに伸びると予測しています。年率9%の成長率です。

 ただし、このEIAの予測は非常に保守的であるとみる市場関係者もいます。

 世界各地に生産拠点を持つ太陽光製造・事業開発会社の戦略部門責任者である筆者の米国人の知人は、2020年までに太陽電池版ムーアの法則によって製造コストが現状レベルより50%下がり、連邦政府の減税政策が継続されれば米国の多くの地域でソーラー発電のグリッドパリティが実現し、米国の太陽光発電規模は10万MWに達すると読んでいます。

 どちらの予測がより現実的かは別にして、コストが最大のボトルネックとなっているソーラー発電にとって、製造コストの大幅な削減と政策支援が普及のペースを左右することは間違いありません。

*10Wikipedia - Grid Parity