徴用工の請求権は日韓条約で解決ずみ

 外交的には、徴用工の問題は日韓基本条約で解決ずみだ。未払い賃金などについては、1965年の日韓基本条約で日本政府が韓国政府に「経済支援」を行ない、韓国政府が労働者に支払いを行なうことになっており、これによって「請求権問題は完全かつ最終的に解決した」と条約に明記されている。

 しかし韓国政府は、1980年代になって一部の歴史家が朝鮮人労働者の動員や徴用を「強制連行」と名づけ、その総数は100万人にのぼると主張した。これを受けて韓国政府は「強制連行は日韓条約のときは知られていなかった問題だから新たな請求権が発生する」と主張した。

 それに便乗して出てきたのが慰安婦問題だったが、今となってはそれがフィクションであることは明らかで、韓国政府も問題にしなくなった。その代わりに出てきたのが徴用工問題で、こっちは慰安婦のような根も葉もない話ではない。

 今年6月、戦時中に朝鮮半島から徴用され、三菱重工業の名古屋の軍需工場で働かされたと主張する韓国人女性や遺族計5人が損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、韓国の光州高裁は原告の個人請求権を認めた一審判決を支持し、三菱に約1億ウォン(約1100万円)を支払うよう命じた。

 韓国では、大法院(最高裁)が2012年に元徴用工の請求権は「消滅していない」とする判断を示し、地裁、高裁で日本企業に対する原告勝訴の判決が相次いでいる。日本政府が徴用工について国家責任を認めるような発言は、こうした動きに利用されかねない。