中国工程院院士の鐘南山氏は、「中国政府は世界で最も力の強い政府であり、やろうと思えば、何でもできる」と言う。この表現は、中国政府の力を決して誇張するものではない。一党支配政治において、その政府の力は民主主義の政府は比べものにならないほど強い。
鐘氏の指摘のなかで非常に重要なのは、中国で所得格差の縮小や環境の改善などがなかなか進まないのは、政府が「できない」からなのではなく、「懸命に取り組まない」からだ、としている点だ。
ギリシャの財政破綻の一方で、上海株式市場の株価指数が乱高下している。ギリシャ危機の原因は政府財政の不健全性にあると言われるが、突き詰めれば、財政を統合せず通貨だけ統合するユーロ圏のモデルに問題があったと言わざるを得ない。
構造的な問題を抱える中国経済も、制御不能な状況に陥っている。李克強首相は「中国経済はハードランディングしない」と強気な発言を繰り返す。しかし、上海市場の株価を見る限り、すでにハードランディングしていると言えるだろう。構造転換が遅れ、ファンダメンタルズがまったく改善されないなかで、株価は乱高下している。