リクルートグループの中に「アドバンスドテクノロジーラボ」(ATL)という部署がある。ラボ長以下、総勢10人という小さな組織だ。「リクナビ」や「SUUMO」「ゼクシィ」などといった著名な情報サービス事業の陰に隠れ、ひっそりとした目立たない組織だと言ってよい。

 しかし実はATLは、まさにリクルートらしさを体現する部隊であり、これからのメディア企業、情報サービス企業のあるべき姿を示す組織なのだ。

 ATLは「リクルートテクノロジーズ」という会社の一組織である。2012年10月にリクルートは、リクルートホールディングスと7つの主要事業会社および3つの機能会社に分社化した。その3つの機能会社の1つがリクルートテクノロジーズだ。ATLはリクルートテクノジーズの中で、ギークなエンジニアが集う「先進技術の研究所」として存在している。

 現在、情報サービス企業はIT企業としての色彩を強くしている。ネットが普及し、PCのみならずスマートフォン(スマホ)やタブレットといった情報端末が当たり前に使われるようになった。消費者が求める情報をいち早く伝え、新サービスを立ち上げ、ユーザーの支持を得続けるには、常にその時代の先端的なIT技術を取り入れ続けなければならない。ATLは先端的なIT技術そのものや、その技術を実際のサービスに適用する可能性を検討していく専門の部署である。

デバイスの変化に乗り遅れるのは致命的

 リクルートテクノロジーズ最高技術責任者(CTO)、ATLラボ長の米谷修氏は、ATLのミッションについてこう話す。

「リクルートテクノロジーズの主力事業は、リクルートグループの様々なWebサービスの開発、ネットマーケティング技術の開発などです。その中でATLは、『世の中の先進技術から新しい価値を創出する』ことをミッションとしています。世の中にまだ広がっていない新しい技術的要素をリサーチし、検証し、組み合わせて形にする。2年、3年後の未来にブレイクしそうなソリューションを開発するわけです」