また国会で、労働者派遣法の改正案がもめている。これまで2度も継続審議になった上に、今度は厚生労働省の担当課長が「これまで派遣労働は期間が来たら使い捨ての物扱いだった」と発言したことに野党が反発し、今国会での成立が危ぶまれている。

 ここには二重の問題がある。派遣労働者を正社員ではないというだけで「物扱い」する役所と、派遣労働を規制すれば問題が解決すると考える野党だ。彼らはともに「正社員が唯一の正しい働き方だ」と思っているようだが、それは本当だろうか。

派遣を減らしたらパート・アルバイトが増えた

 この言葉には、派遣労働者を蔑視してきた役所の発想がよく表れている。彼らは企業に一生忠誠を誓う正社員だけを労働基準法の対象にし、それ以外は奴隷だと思っているのだ。派遣が奴隷なら、問題の解決は簡単だ。派遣を禁止すればいいのである。

 派遣を減らしたら正社員が増えるだろうか。派遣を雇うのは正社員のコストが高すぎるからなので、派遣がだめならもっと安いパート・アルバイトに代えるだろう。それが現実に起こったことだ。

日本の正社員と非正社員(出所:労働力調査)

 上の図のように、2007年には140万人だった派遣社員は、民主党政権の規制強化で2012年には90万人に減ったが、このとき正社員も減った。その後の人手不足で増えたのは、パート・アルバイトで1347万人。派遣社員の10倍近い。