今年7~9月期のGDP(国内総生産)速報値が年率1.6%減のマイナス成長になったことは、大きな衝撃だった。これを「消費税増税の悪影響だ」として、安倍晋三首相は今週中にも衆議院の解散を表明するものと見られているが、これは問題のすり替えである。

 消費増税の影響は一過性のもので、普通は半年たつとプラス成長に戻る。増税後2期連続でマイナス成長というのは、歴史上初めてだ。この最大の原因は消費税ではなく、安倍政権の作った人為的な不況である。これをアメリカの投資サイトはバンザイノミクスと呼んでいる。

巨額の量的緩和で円安不況を悪化させる自殺行為

 バンザイというのは「バンザイ突撃」のことだ。これは太平洋戦争で弾薬の尽きた日本軍兵士が「天皇陛下バンザイ」と叫んで銃剣だけで敵陣に突撃するもので、特攻隊と同じ自殺攻撃として米兵に恐れられた。“Banzai”というのは、英語で「自殺行為」という意味がある。

 安倍政権の経済政策がバンザイノミクスと呼ばれるのは、それがインフレを作り出すために実体経済を悪化させたからだ。GDP速報でも分かるように、家計消費は+0.3%(年率+1.4%)に戻したが、設備投資が-0.2%(同0.9%)になった。

 これは問題が消費ではなく投資の落ち込みであることを示す。特に目立つのが、住宅投資が-6.7%(年率-24.1%)と大幅に落ち込んだことだ。この原因は金融緩和で住宅投資が増えた反動と、資材不足や人手不足などの供給制約と考えられる。

 ただでさえ原油価格が2倍以上に上がってエネルギーコストが上がっている日本で、民主党政権が原発を止めてLNG(液化天然ガス)の輸入をGDPの0.5%以上も増やし、さらに安倍政権が円安政策でドルベースのエネルギー価格を40%以上も上げた。

 おかげで1%程度のインフレにはなったが、それは金融緩和とは無関係な、エネルギー価格の上昇によるコストプッシュ・インフレである。ところが今年の後半になって原油価格が大幅に下がったため、日銀はあわてて追加緩和をした。

 これは本末転倒だ。今の円安不況をもたらしているのはエネルギーなどの供給制約であり、原油安はそれを緩和する効果があった。しかし追加緩和でドルが上がったため、原油安は帳消しになってしまった。供給不足をさらに悪化させる安倍政権の経済政策は、不況を大不況にする自殺的なバンザイノミクスである。