「改称」問題が日本で話題になったグルジアも、現地では比較的静かな新年を迎えたようだ。2014年秋には2度グルジアを訪れる機会を得たが、国防相交代と与党連合再編という一波乱はあったものの、2年前の選挙による政権交代や、前年の大統領と首相交代など権力構造そのものについて大きな変化は生じなかった。
しかし、本稿後半でも述べるように、ウクライナ問題の波及や遺跡破壊とナショナリズム問題など、ユーラシアの地政学問題を強く感じさせる出来事も起こっている。
さらに、ウクライナ問題との連関だけではなく、例えば、イスラム国の有力指揮官にもグルジア出身者が存在する(『ロシア・ユーラシアの経済と社会』2014年11月号の拙稿参照。なお、「中東・イスラーム諸国の民主化」データベースに新たにグルジア項目を追加した。
我々が抱きがちな~VS~など二項対立というナイーブな見方を調整するためにも、2015年のユーラシア政治を考えるうえでこの小国の動きに一層注意を払う必要がある。一方、日本グルジア二国間の交流もまた深まりつつあるので、新年最初の回では、まずこの話題について触れよう。
文化交流の促進
グルジア現地では歌舞伎など日本の文化コンテンツはソ連時代以来変わらず絶大な人気を誇る。
ほとんど日本では考えられないほどであり、たびたび触れているが、例えば日本と聞いて近松門左衛門(と特に芥川龍之介、安部公房など、ほかに大島渚や三島由紀夫、黒澤明など)の名前をほとんどの知識人がすらすら口にするほどである。2014年秋にも歌舞伎舞踊のコンサートが開催され、大変な人気を博したようである。
一方、日本においても、2014年秋には大相撲でのグルジア出身の栃ノ心関の復活という嬉しいニュースがあった。日本にとってはくやしい話だが、ラグビーでもグルジアが日本に勝利して、テストマッチ連勝を11で止めるなど、人口約400万の小国ながらグルジアのスポーツ魂は健在である。
また、グルジアの自然派ワイン(ヴァン・ナチュール)がフェスティヴァンという東京の大きなイベントで大々的に紹介された。「ジョージア・ワイン」は実にフランスとイタリアに次いで多くのワイナリーとその生産者が参加し、大いに盛り上がった。