米金融大手シティグループの日本法人シティバンク銀行は、撤退する個人向け事業について、三井住友銀行に売却する方針を固めたようだ。報道によると、今週にも最終合意し、正式発表するという。

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シティバンク銀行のリテール事業撤退で他行は顧客争奪に虎視眈々〔AFPBB News

 シティの個人向け事業は実質赤字とみられているが、邦銀にとっては約1兆円(預金量は約3兆8000億円)といわれる外貨預金残高と富裕層の顧客が大きな魅力で、邦銀数行が事業買収に名乗りをあげていた。

 とはいえ、シティユーザーがそのまま売却先銀行に移るかどうかは不透明で、事業譲渡交渉の裏では、各行による顧客の争奪戦が繰り広げられている。

 シティユーザーにとって同行の魅力は外貨預金や資産運用などの幅広い金融サービス、なかでも世界約200の国と地域で現地通貨を引き出せる現金自動預払機(ATM)にあった。こうしたサービスが事業譲渡後にどの程度維持されるかどうかはユーザーにとって大きな関心事だ。

 移行されるサービスの詳細は明らかになっていないが、たとえば売却後、シティのATMを従来通り自行扱いで使えるのと、他行扱いで使うのとでは手数料も変わるだろう。そうしたサービスの継続性によっては、顧客が流出する可能性が大きくなる。

シティバンク銀行コアユーザーの特徴と関心事

 ここに興味深い調査結果がある。総合マーケティング会社のネオマーケティングがシティバンク銀行ユーザー500人を対象に行った独自の意識調査である。

 それによると、調査対象者のうち、シティのコアユーザーは約1割程度であることがわかった。ただ、その1割は高額預金者への優遇サービス(シティゴールド、シティゴールドプレミアム)を利用している「ゴールド会員」である。

 ゴールド会員はシティの各種商品・サービスを利用する一方、残り約9割の非ゴールド会員は、円普通預金と外貨預金の利用が中心で、ほかの商品・サービスはあまり利用していないという。

 たとえば、ゴールド会員の62.5%がバンキングカード(国内利用)を使っているのに対し、非会員では17.5%しか使っていない。口座利用の目的も、ゴールド会員は「海外ATMの利用」(54.2%)、「国内ATMの利用」(47.9%)ともに多いのに対し、非会員は前者が31.9%、後者も16.4%と少ない。

 さらにゴールド会員は「生活費の支払」「給与・年金の受け取り」といった生活口座としての利用や、「投資信託」などの資産運用、「外貨預金」「海外送金」などの外貨利用を目的としてあげた割合も高い。

 こうした調査結果から、ゴールド会員の多くがシティをメインバンクとして日常的に利用している半面、9割を占める非ゴールド会員は外貨預金や海外ATMの利用を目的に口座を開設したものの、全体的に利用しているサービスは少なく、国内メガバンクなどをメインにし、シティはセカンドバンクとして利用、もしくはほとんど利用していない実態が明らかになったとしている。