ミラノに来ている。ちょうど10月16~17日にASEM首脳会議が開催されたのに伴って、イタリアのシンクタンクISPI(国際政策研究所)主催による欧州とアジアの有識者を集めた会合に招待されたからだ。

 この2週間の間、ジャカルタに始まり、ワシントンDC、ロンドン、ミラノとぐるりと地球を一周回った。世界の有識者がどのように今の世界を捉えているのか様々な意見を聞いた。そして、筆者の見方も虚心坦懐にぶつけてみた。

 その問いと答えは様々だが、1つだけ間違いなく一致していることがあった。「世界はすでにひどく悪い状況にあり、不幸なことに間違いなく一層悪い方向に向かっている」という赤裸々な認識である。

 それにしても、わずかこの2週間の間にも、世界全体が一歩ずつ確実に悪い方向に向かっている。そして、そのスピードは誰もが驚くほどだ。

 本稿では、世界の混乱が極まる中で私たちが譲るべきではない、いくつかの原則とは果たして何なのか、皆さんと虚心坦懐に考えてみたい。

「世界の終わり」の始まり?

 最初に、筆者がこの2週間の間にこの耳で聞き、この目で見た事実とニュースを次に簡単に並べてみよう。

 ジャカルタでは、中東の「イスラム国家」を支援するインドネシア人サラフィー主義過激派の会合まで頻繁に開催されるようになっている。1カ月前には4人の新疆のウイグル系のイスラム過激派と見られる人々がスラウェシ島で拘束されている。マレーシア人の支援を受けてトルコに向かう途中であったという。

 香港に向かうキャセイ・パシフィック航空では、「西アフリカのエボラ出血熱、中東地域の中東呼吸器症候群(MERS)、中国における重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行をふまえて、症状に疑いのあるお客様は香港当局に報告が必要となっています」との機内アナウンスがあった。米国の感染症研究所CDCによれば、今、緊急対策がとられなければ、来年1月半ばには、エボラ出血熱の感染者数は140万人を超えるという。