ホノルル沖を並走するアメリカ海軍病院船(左)と中国海軍病院船。アメリカ海軍は削減されてゆく戦力を太平洋と大西洋に分割しなければならない(写真:アメリカ海軍)

 米連邦議会の超党派諮問委員会である米中経済安全保障調査委員会は、毎年「年次報告書」を連邦議会に提出する。このレポートでは、中国の軍事力に関する詳細な分析が紹介されている。

 11月中旬に公表される「米中経済安全保障調査委員会年次報告書2014年版」は、最終草稿から判断すると、かなり強烈な対中警戒論を提示することになりそうだ。以下、「年次報告書2014年版」が指摘する(であろう)諸点からいくつかをピックアップして列挙してみよう。

東アジアのパワーバランスが激変する

 東アジア地域の軍事的パワーバランスは、以下の理由により大幅に変化する方向性にある。

(1)中国人民解放軍の急速な近代化

(2)中国共産党政府による中国周辺諸国やアメリカに対する敵対的政策の激化
(この傾向は、中国経済成長の鈍化や中国社会での歪みに伴って増大しつつある国内の不満を近隣諸国との対外的緊張に反らせるために、ますます強まるであろう)

(3)強制財政削減措置を含めてアメリカ国防予算の大幅削減と、それに伴うアメリカ軍の戦力の全般的な弱体化

 このような要因に基づくパワーバランスの変化は、当然のことながら、中国にとっては有利な状況をもたらす。日本やインドを始めとする中国の隣国にとっての安全保障関係は極めて不安定にならざるを得ない。同時に、台湾海峡、朝鮮半島、南シナ海そして東シナ海といった紛争地域での軍事状況は深刻化することが避けられないであろう。