コンピュータ将棋の歴史はおよそ45年といわれている。プロ棋士の棋譜を元にプログラムを組み、何度も改良が重ねられてきたが、当初のコンピュータ将棋のレベルは、プロ棋士に勝てるものからはほど遠かった。
1990年代に普及したゲーム機用の各種将棋ソフトもお遊びの域を超えず、プロ棋士を脅かすようなレベルに及ぶことはなかった。僕が子供時代に遊んだ将棋ソフトも、人間を負かそうとする迫力よりも、かわいげすら感じられる力量であったことを思い出す。
「電王戦」の結果が示すテクノロジー進歩の速度
「コンピュータがプロ棋士を負かす日は?」。1996年版の『将棋年鑑』(日本将棋連盟)内におけるプロ棋士向けのアンケートだ。
この設問に対し、「永遠になし」「こないでしょう」「来世紀」「100年は負けない」「そういうことになったらプロは要らなくなるので、こないように祈るしかない」などと否定的な有力棋士も多い中、羽生善治氏は「2015年」とピンポイントの年数で回答していた。
それから15年ほど経った2012年、プロ棋士とコンピュータ棋士ソフトによる棋戦「電王戦」が行われることになった。
その第1回目では、故・米長邦雄永世棋聖と第21回世界コンピュータ将棋選手権優勝ソフト「ボンクラーズ」が対局し、故・米長邦雄永世棋聖の“衝撃的な敗北”に終わった。
翌2013年の第2回「電王戦」では、選抜された5人のプロ棋士と第22回世界コンピュータ将棋選手権の成績上位5チームによる団体戦が行われたが、プロ棋士がコンピュータに1勝3敗1分と、再びコンピュータがプロ棋士を圧倒する。
2014年に行われた第3回「電王戦」の五番勝負(団体戦)では、プロ棋士側の通算成績が1勝4敗と、前年の成績をさらに下回る結果となり、随分と話題になった。