イラクやシリアで活動を続けるイスラム国への空爆が始まって数週間が経過した。アメリカは中東や欧州の同盟国や友好国と共に空爆を続ける一方、地上部隊を限定的に用いて軍事的な解決を模索している。

イスラム国との「非対称戦争」

 イスラム国はここ数カ月の間に台頭してきた、国家として認識されることのない、そして国家の機能を持たない暴力組織である。

 まさに「国家」対「非国家」主体の戦争が始まろうとしている。この種の戦争は他の戦争と比べて戦う者同士が持つ資源の量、つまり力の量に顕著なギャップがあるため、非対称戦争とも呼ばれる。

 国家と非国家主体の間の戦争は日本ではあまり馴染みのないものである。21世紀に入り対テロ戦争、イラク、そしてソマリアなどの作戦はまさにそれに当たるが、現地で行った自衛隊の活動はあくまで間接的なものであった。

 結局日本の安全保障にとって重要なのは非国家主体との戦争よりも、中国との領土紛争や朝鮮半島の安定化と拉致問題の解決、そして日米同盟の維持である。

Adapting to Win: How Insurgents Fight and Defeat Foreign States in War』(写真提供:筆者、以下同)

 しかし世界の情勢は変化し続ける。つい半年前までは聞いたこともなかったイスラム国のような新しい過激派グループも発生する。様々な種類の戦争も遥か彼方で起こり、国際社会の重要な一員であり続けるためにも、変わりつつある軍事環境を理解することは大切である。

 今月、まさにその非対称戦争に関する著書『Adapting to Win』をアメリカで出版した。弱者は戦争においてどう強国と戦い、どうやって勝つのかという問題に正面から取り組んだ。

 分析における事例としてはここ数年イラクやアフガニスタンなどで行われた戦争を扱っており、今回のイスラム国との戦いに関してもいくつか意味合いを引き出すことができる。

 本稿ではその本を元に、今後考えられる国際安全保障の問題を検討したい。

 また、12月19日の金曜日にアルカディア市ヶ谷で開かれる講演会(主催:国際地政学研究所)で、本稿の内容をさらにアップデートした形で説明するので、興味のある方にはぜひそちらにも足を運んでいただきたい(お問合せはこちらから)。