今週は偶々、公開のセミナーが2本集中するスケジュールとなりました。

 1つ目は9月3日の19時から、本連載の発展企画でJBPressセミナー、タイトルは編集部から「日本のイノベーションは復活するか~理系スキャンダルをチャンスに変える処方箋」といただきました。私はこれを受けて「プリンキピアMOTの勧め」という資料を準備してうかがうことにしています。

 場所はTKPガーデンシティお茶の水、開場: 18:30、開演: 19:00、閉会: 21:00の予定です。ネット上でもいろいろご意見をいただきますが、どうぞこういう機会ですので是非お運びいただければ、質疑などにもできる限りお答えするようにします。

 本コラムの末尾に要領が出ると思いますので、そちらをご参照下さい。

 もう1つは日曜日9月7日の14時から哲学熟議4、「震災・津波の科学と倫理」として東京大学本郷キャンパス・理学部1号館「小柴ホール」にてロバート・ゲラ―、杉本めぐみ、一ノ瀬正樹の諸先生方と、3.11以降福島原発事故に社会の注意が集中しやすいですが、地震、津波の側面に焦点をあてて考えてみたいと思います。

 開発と地誌の忘却

 8月16~17日にかけての豪雨が引き金となって、兵庫県から広島県にかけての広範な地域で地滑り、土石流などの甚大な被害が発生してしまいました。

 降雨そのものはもちろん自然現象ですから、これらは「天災」の側面も持っています。しかし決してそれだけではすまない、人の為せる業が、幾重にもわたって深く関連していると思うのです。

 テレビやネットワーク上で広く取り上げられた1つに、広島市安佐南区の地名変更がありました。

 水害などのリスクを反映した古い地名が廃止され、ニュートラルな名前で宅地が造成されていた、そうしたエリアの住宅が甚大な害を被った。そうした側面が確かにあるようです。

 地名を巡る問題には様々にデリケートな側面もあることから、あまり乱暴なことは言えませんが、都市部から比較的近く、交通の便の良い、しかし従来は山間のような場所が新たに切り開かれ、宅地化されるようなとき、「希望ヶ丘」とか「美しが丘」とか、魅力的なネーミングが優先し、地誌的なリスクを一切感じさせない、少なくとも何百年という 長い年月の間、幾度も同様の災害が襲ってきたケーススタディの英知が、住民に全く伝えられなければ・・・地震や豪雨のように不意に襲ってくる自然災害が、2次的に拡大してしまう懸念が払拭できないでしょう。