前回、8月18日付の本コラムでは、外国人女性支援組織「KAFIN(カフィン)」が外国人女性の集う場になっていることや、KAFINがミンダナオ島出身の1人の女性の奮闘により立ち上がったことを説明した。
では、KAFINに集まる外国人女性は具体的にどのような困難に直面してきたのだろうか。今回は外国人女性の置かれた不利な状況についてリポートしたい。
農村部の「花嫁」など、日本全国から助けを求める声
KAFINを立ち上げた長瀬アガリンさんの元には、その後、日本の地方や農村部に暮らすフィリピン人女性からもSOSのメッセージが届くようになる。DVや離婚問題を抱えるフィリピン人女性が地方にいたのだ。
日本へはこれまでに、「興行」資格で来日し、エンターテイナーやホステスとして就労してきた女性に加え、アジア諸国から「花嫁」として日本の地方や農村部に渡った女性たちがいるからだ。嫁不足に悩む地方や農村部の男性の元にアジアの女性たちが嫁いでいった。
エンターテイナーとして来日した女性たちも地方で働き、家族を持ったりしているケースが少なくない。パートナーの転居などに伴い地方に移ることもある。こうした都市から離れたところにいる女性の中に、助けを求める人がいた。
日本人女性だけでは人材供給が追いつかない「風俗産業」にアジアの女性移住労働者が仲介業者経由で組み込まれ、その一方では嫁不足の地方・農村家庭にアジア女性が花嫁として嫁ぐ。
エンターテイナーは日本人男性と婚姻するケースも多く、日本人女性の代わりにアジア出身の女性たちが再生産領域に組み込まれる動きと考えられる。その流れの中で、家庭という密室の中で、外国人女性は周囲には助けを求めることができずに、KAFINを頼ったのだ。
外国人住民が集住する都市部や一部の工業地帯などには外国人コミュニティーが形成されることが少なくない。そこでは生活に関する情報がやりとりされたり、互いの助け合いの関係が生まれたりすることもある。また「エスニックビジネス」と呼ばれるような移住者による事業が営まれることもある。
同時に、外国人集住エリアには、外国人を対象にした地域のボランティア日本語教室が開かれ、年齢や出身を問わず、教材費のみ、あるいは無料で日本語を学ぶ場が提供されることも多い。それ以外にも、役所、病院、学校、保育園・幼稚園など暮らしに欠かせない機関が、外国出身者への対応のノウハウや経験を蓄積していることもある。
実際には日本語教室や行政などの対応はまだまだ十分ではないと聞くことが多いが、それでも外国人が相対的に多く住む地域は遠隔地よりは恵まれているとされる。
その一方、地方や農村部など、外国人が少ない地域では、各人が離れて暮らしていることも多く、外国人同士のつながりは限られる。また日本語教室が近場にあるとは限らない。そのため外国人は孤立しがちになり、困ったことがあっても1人で悩みを抱え込んでしまう。パートナーによる深刻なDVから逃れることができないこともある。