過度の飲酒や、脱法ハーブを吸引しての自動車運転による交通事故が多発して、死傷者も出ている。6月24日に池袋で起きた事故では、運転手が逮捕される際の映像がテレビで流れた。坊主頭の大男は明らかに意識が朦朧としており、「そんな状態で車を運転するんじゃねえ!」と、私はテレビに向かって思わず怒鳴った。それと同時に、今や公道を走っていれば、こうした連中が運転する車と遭遇する可能性もあるのだと気づいて空恐ろしくなった。

 もっとも、そうした空恐ろしさを感じたのは今回が初めてではない。私は20歳の秋に自動車免許を取得したのだが、学生寮で暮らす貧乏学生には車を運転する機会などなく、半年もするとすっかりペーパードライバー化してしまった。ところが、それからさらに2年ほどして、突然車を運転することになった。寮の仲間が、買い出しに行くために車を手配してきたのだが、運転手がいないのだという。

 「佐川は、たしか免許を持ってたよな」

 「ああ。でも、免許を取ってから、一度も路上に出たことはないぜ」

 そう応じながらも、私はどうにかなるだろうと思っていた。ところが、いざ運転席に座ってみると発進までの手順を忘れている。よく分からないままにギアを1速に入れてからエンジンをかけるといきなりエンストを起こしてしまい、このあと道路に出るのが怖くなった。それでもどうにか走りだしたのだが、その時に私は思った。

 「おれ以外の人たちがみんな運転が上手くて、この車は要注意だと気づいてくれていればいいが、おれと同じくらい下手な人が運転している可能性だってあるわけだよな」

 すると、こちらがエンストを起こした拍子に追突される光景がリアルに想像されて、私は今すぐ車から降りたくなった。

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 その後は場数を踏んで、私もどうにか一人前のドライバーらしくなっていった。法令厳守をモットーに、飲酒運転はもちろん、制限速度をオーバーしないように気をつけながら運転している。それでも車がらみで恐ろしい目に遭ったことはあって、今回は私が遭遇した交通事故について書いてみたいと思う。