目が吸い寄せられてしまうほどに美しいガラスのアクセサリーを作る、ガラス作家の鈴木美智という女性を知っているだろうか。パリに住む鈴木さんは、フランスのほかのガラス作家とは一線を画すデザインで、絶賛され続けている。
「自然のもの」「海の生物」「生き物のよう」。そんなふうに描写する人が多い鈴木さんのデザインは、初めは珍しがられ、その後は展覧会で常に注目されるようになり、最近では2013年に、フランス国内外約300人もの工芸家が出展した第1回工芸フェア「REVELATIONS」の出展者紹介ビデオに取り上げられた。ビデオ紹介枠は2人のみで、その1人が鈴木さんだった。
2014年には、6000人の工芸家が所属するフランス工芸家組合(Atelier d'art de France)の新年の挨拶ビデオに登場した。日本人の会員はそれほど多くないというから、本当に素晴らしい活躍ぶりだ。
国内外での数々の展覧会に向けて、またギャラリーでの販売、個別のオーダーと、すべての作品を鈴木さん1人の手で作っている。そんな多忙な合間を縫って、日本での自身の展示会にも足を運んでいる。
小さいころから絵を描くのが好きだった鈴木さんは、あるとき、色セロファンでステンドグラスを作った。光を透す絵が綺麗で、とても心に残ったという。
その後も、ステンドグラスとの縁があった。小学生のときに見たステンドグラスの写真だ。そんな経験からガラスという素材への愛情がいつしか強いものとなり、「ステンドグラスを作る人になりたい」という希望がわいた。
ステンドグラスからガラスのアクセサリーに変わったものの、いま、鈴木さんは夢の一歩手前にいる。
「夢の中に生きていると、まだ言い切れない気がしますね。あと少しで何かが見えてきそうな感じです」
そんな鈴木さんのガラスの世界をのぞいてみた。
短時間で創り出す、手が込んだ華やかな美
こんなに小さいのに、なんという凝りようだろう! 一体どうやって作っているのか。直径わずか数センチという鈴木さんが作った球体を見たら、その美しさ、そして何よりも細工のこまやかさにしばし呆然としてしまう。
アトリエに置かれた細長い色ガラスの棒が材料。それらをバーナーで溶かして、くっつけたり伸ばしたり巻いたり、ときには息を吹き込んで膨らませたりを繰り返すことで、繊細な模様が生まれる。