本記事はLongine(ロンジン)発行の2014年5月29日付アナリストレポートを転載したものです。
執筆 笹島 勝人
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投資家に伝えたい3つのポイント

●異次元緩和により、国債の金利は大きく低下しただけでなく、今や0.6%前後で動かなくなりました。
●国債の売買は儲けにくくなり、2014年3月期の業務純益の減益の一因です。銀行は「取引する動機」だけでなく、金利0.6%では経費をまかなうことも微妙なので、「保有する動機」も失いそうです。
●年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF)だけでなく、生命保険も国債から株などリスク資産シフトの可能性があります。増え続ける国債を、日本銀行以外に誰が買うのか、気にしないわけにはいかなくなりました。

日本銀行の国債保有は、異次元緩和から83兆円増・約1.7倍

日本銀行が異次元緩和に踏み切ってから、はや1年と2か月になろうとしています。日本銀行が市場から巨額の国債を買い入れた結果、保有する国債の残高は2013年3月末の125兆円から直近2014年5月20日時点で208兆円と、じつに83兆円も増え約1.7倍となりました。当初に掲げた「物価上昇率2%」に対し、先月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)にあるように、2015年度1.9%・2016年度2.1%という見通しが示されました。政策目標が達成される公算が高まり、黒田総裁の先日の会見報道では「景気は緩やかな回復継続」ともあるので、当初の成功を収めつつあるということでしょうか。

長期金利つまり10年物国債の利回りは0.6%でこう着

10年物国債の利回りは、異次元緩和の直後から低下し、2013年末までは0.8%~0.6%のレンジ内で動いていましたが、2014年に入ってからは0.6%前後ですっかり動かなくなりました。この間、アベノミクスや消費税率引き上げ前の駆け込み需要などで景況感も良くなり、本来、「長期金利は上昇=国債価格は下落」するはずです。そうなっていないのは、いうまでもなく日本銀行が国債市場を買い支えているためです。財務省の資料によると、2014年3月末の国債残高は854兆円、1年前に比べ32兆円も増えました。政府債務の残高は借入なども含めGDPの2倍を超えています。しかも毎年、膨大な借り換えが発生するので、調達コストが増大して財政の悪化を加速させないためにも、金融政策としては長期金利の上昇は避けないといけません。

国債を「取引する動機」がなくなった

2014年3月期の、三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)、三井住友フィナンシャルグループ(8316)、みずほフィナンシャルグループ(8411)、の業務純益(連結粗利益-経費)は前年比5%減でした。債券売買など特定取引とその他業務利益を合わせた市場部門が同21%の大幅な減少となったためです。アベノミクスで、投資信託販売や証券子会社の手数料収入は好調でしたが、カバーできませんでした。価格が動かなくなった国債市場では、売買しても儲からないだけでなく、「取引する動機」そのものが無くなりつつあります。メガバンク国債の残高72兆円、1年前の101兆円からじつに28兆円・同28%も減っています。