北米報知 2014年5月22日22号

 1912年に初めて日本から米国へ桜寄贈が行われたことを記念して進められる日米親善の桜植樹の事業一環で、ワシントン大学に新たに日本の桜が植樹された。5月20日に記念式典が行われ、マイケル・ヤング学長、大村昌弘総領事ら大学、日本政府、コミュニティー関係者が出席し、桜を通して結ばれた絆を讃え合った。

曽我部アキさんによる切り絵記念アートの前で握手するヤング学長と大村総領事

 植樹先はメインキャンパス内のドラムへラー噴水を中心に南北に伸びる並木道、レーニアビスタに18本。レーニア山を臨む景観で春の季節を彩る憩いの場となる。ワシントンパーク植物園にも14本が植樹された。

 ヤング学長は多くの卒業生を輩出してきた日本、日系コミュニティー、また大学における日本研究、歴史、言語学、工学など、日本との関係を深めてきた各プログラムを讃え、「今後も日本、日系社会、ノースウエストの関係をより深めていかなければなりません」と語った。

 大村総領事は桜を通したシアトルと日本の関係に言及。1960年に植樹された天皇陛下の桜や1976年に植樹された三木武夫首相の桜から始まるシアトル桜祭・日本文化祭の歴史を紹介し、日本をはじめアジア諸国と密室な関係を保つノースウエストのコミュニティーに謝意を述べた。

ワシントン大学内レーニアビスタに新しく植樹された桜

 プロジェクトを進めてきたテツデン・カシマ教授は支援者への感謝を通し、育まれてきた絆が桜を通して将来に繋がっていくことを願った。植樹にあわせ、歴史を讃える記念碑の制作も進められており、レーニアビスタの一角に設置されることも明らかにされた。

 ワシントン大学と日本とのつながりは、同大学に初めて日本人学生が入学してから120年目を迎え、現在にいたるまで多くの日本人留学生や日系人学生の学びやとなってきた。

 また同大学内の日系人同窓会は2012年に90周年を迎えており、昨年8月にヤング学長を迎えてのイベントも開かれている。日本研究を進める国際学部も100年以上の歴史を誇るなど、学を通じた日本との繋がりは深い。

 ワシントン大学では、当地でも桜の名所として知られ、クアッドと呼ばれる中庭には毎年春に大勢の訪問客が訪れる。一方、レーニアビスタの南端にも24本の桜が咲かせていたが、ライトレールのワシントン大学駅建設工事の関係で抜かれることになった。

 1月のワシントン大学の発表によると、木の健康状態が弱化しており、移植の成功の可能性も低いことから倒木することを決定。同大学による記念家具、アートプロジェクトに利用される計画という。

(記事・写真=佐々木 志峰)

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