4月初めに出された学習到達度調査(PISA)のニュースは、スウェーデンの教育関係者にとっては洒落にならないほど怖い話だった。経済協力開発機構(OECD)が実施した、15歳の問題解決能力テストの国際比較ランキングで、スウェーデンの子供の成績は北欧国の間で最も低く、OECD加盟国中下から3番目という結果だ。
PISAというのは「Programme for International Student Assessment」の略で、上述の通り、OECD加盟国の生徒を対象とした国際学力比較調査だ。
昨年12月に公表された数学と理科、読解力を試すPISAテストに続き、スウェーデン生徒の得点はまたしてもOECD加盟国の平均を大きく下回っている。
止まらないスウェーデン生徒の学力低下
この結果について、学校庁は「2000年と2003年に実施されたPISAテストでは、スウェーデン生徒の得点は全ての分野でOECD平均を上回っていた。が、その後、スウェーデン生徒の成績の平均は、他のすべてのOECD加盟国に比べて最も悪化した」と書いている*1。
筆者自身も6年生を筆頭に3人の子を持つ親として、スウェーデンの学校教育の現状はやはり気になる問題ではある。
公表された結果を見ると、成績のよい国・地域は上海(中国)を筆頭に韓国や香港、シンガポールなど、アジア勢が上位を占めている。
その反対に、欧州と米国は年々ランクを低下させているようだ。スウェーデンは、特に数学の成績が、この十数年間に垂直落下と言ってもいいほど低下した。
「スウェーデン生徒の学力低下が止まらない」問題は、移民・難民政策や失業問題と並び、この秋に実施される総選挙の主要な争点になる可能性がある。
多くの識者が憂慮し口にするのは、スウェーデンは国民に対する手厚い福祉政策と高賃金を維持するために、知識集約型の国として国際競争をしていかなければならない。なのでスウェーデンにとって、知識の低下は致命的な障害になり得る。知識の低減により、福祉と富の両方が減価される――という議論だ。
とはいえ、これは今急に認識され始めた問題ではない。
PISAの結果を見るまでもなく、スウェーデン学生の学力低下は教育関係者らから繰り返し指摘されている。高校や大学の先生方は、総じて「今の学生は勉強しなくなった」と嘆いている。国内でも優秀な学生が集まっているシャルマシュ工科大学では、学生の入学直後に実施する数学テストの成績が、年々目に見えて低下しているという。