福島第一原発事故の放射能汚染からの避難生活を続ける「原発難民」を訪問した報告を続ける。3月上旬、山形県に避難して暮らしている渡辺理明さん(43)一家を訪ねた(参考:前回訪問したときの記事「野球を教えられなくなった少年野球の監督」)。

 私が知っているだけでも4回目の転居をしたとメールが来た。「円形脱毛症になった」「病気で入院した」「高校生の長男が部活でいじめにあった」と気がかりな知らせがあった。一体何があったのか。避難の疲れなのか。

円形脱毛症、下血、嘔吐・・・

 山形県の渡辺さん一家を訪ねるときは、その故郷である南相馬市とは反対方向へ向かう。南相馬市へ行くときは、JR福島駅でレンタカーを借りて東へ向かう。1時間半かかる。渡辺さんを訪ねるときは、そのまま山形新幹線で西に向かう。福島駅から1時間かかる。渡辺さんたちが暮らす避難先の、故郷からの距離を感じる。

 山形駅まで渡辺さんが車で迎えにきてくれた。

 「どうも、どうも!」

 通りの反対側から大きな声がした。会うのは半年ぶりだった。見慣れたコロコロした顔がニコニコと運転席から手を振っていた。しかし、車に乗って心配になった。一見して顔色が悪い。土気色だし、生気がない。しわや白髪も増えた。話し方も以前より元気がない。

 転居したアパートには10分ほどで着いた。ここで渡辺さん一家を訪ねるのは初めてだ。思えば、渡辺さんを訪ねるだけでもう4カ所も場所が変わっている。山形県寒河江市で、避難者の住宅用に充てられた温泉の旅館の部屋。一家6人が1室で暮らしていた。同市のアパート。一時帰宅した福島県南相馬市。

 渡辺さん、妻の久恵さん(41)とリビングのテーブルで向かい合った。こっちはどうですか、と挨拶代わりに聞く。