第1回大学対抗カンボジア・ロボットコンテスト(以下ロボコン)当日、3月29日。開会式まで1時間半に迫った朝7時半――。

参加学生の登録が始まった。手前は登録の手伝いをしてくれた青年海外協力隊の山口裕代さん(筆者撮影)

 続々と、参加学生たちがカンボジア国営テレビ局の第1スタジオにやって来た。参加チーム数41、参加学生は84人。

 スタジオ裏の「ピット」と呼ばれるロボットの調整を行う場所に自慢のロボットを大切そうに携えて集まり、テスト走行用の競技盤で皆、実に楽しそうに最終チェックを始めている。

 お手伝いを自主的に申し出てくれた青年海外協力隊の5人も集合し、カンボジア国営テレビ局、タイのテレビ局MCOT、タイ・ロボコンのチャンピオンチームDPU(トゥラキットバンディット大学)のメンバーたち、そしてカンボジア国内の各参加大学、これら混成チームによるカンボジア初のロボコン、いよいよスタートである。

タイのロボコンチャンピオン、開会式直前の大活躍

 しかし・・・スタジオではまた新たな問題が起こっていた。

 タイのロボコンチャンピオンチームのインストラクター、トンが、私が予め作成していたワードによるスコアシートでは集計が間に合わないから、エクセルでスコアシートを作り直した方がいいと言うのである。

 スタジオには計3台のノート型PCがあったが、1台は各ロボットの走行スピードを計るための秒数カウント表示用に、そしてもう1台はその秒数と連動して各チームの順位が表示されるランキング表示用に既に準備へと入っていた。残っているのは、私の日本語表示のノートパソコンしかない。

 しかし、私はエクセルで複雑な表など作ったことがない。どうしようか・・・と考えあぐねていると、トンはにっこり笑ってこう言った。

 「ジュンコ、大丈夫。ぼくがあなたのPCで作りますから、日本語で指示が出たら、それを英語に訳してください」

 早速トンは私のパソコンを使い、私が予め作っておいたワードの表からコピーして次々と数式を打ち込み始めた。しかし、そもそも理系オンチの私に、数式に関わる日本語すら分かるはずもない。

 「◯◯を参照」と表示される。なんだろう、数学用語の参照って(そもそも数学用語なのかもわからない)。「Reference?」とほぼ直訳でトンに伝える。すると、トンは「ああ〜」と頷いて素早くキーボードを操作し入力。すると表がぱっと切り替わる。成功だ!