バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は7月21日、上院銀行委員会で定例の議会証言を行った。

 市場が注目していたのは、景気・物価の下振れリスクや追加緩和を行う可能性について、どこまで言及するかという点だった。しかし結論から言うと、これらの点で踏み込んだ発言は、今回は出てこなかった。コンセンサス重視型のバーナンキ議長は、自らの考えを前面に出すことが多かったリーダーシップ重視型の前任グリーンスパン氏とは、やはりスタイルが違う。証言本体(FRBから原稿が公表された部分)には、以下のような発言があった。

「私のFOMC(連邦公開市場委員会)の同僚たちと私は、緩やかな成長の継続、失業率の段階的な低下、向こう数年にわたるインフレ率の抑制を予想している」

「(6月FOMCにおける経済)予想は、2月や5月に公表した予想と、質的には似通っている。ただし、失業率の低下ペースは以前に予想されたよりもややゆっくりしたものになると現在予想されており、当面のインフレ率については、やや低くなる可能性が高いように見える」

「むろん、異例な金融政策の緩和の最終的な解除に向けた思慮深い計画をFRBが続けている時でさえも、経済見通しが異例なほど不確実なままであることもまた、われわれは認識している。われわれはこの先の金融および経済の展開を注意深く評価し続けるつもりであり、物価安定の下での国の生産面での潜在性フル稼働への復帰を支援するため、必要に応じてさらなる政策行動を取る用意が、われわれには引き続きある」

 バーナンキ議長は今回の証言で、FOMCの6月見通しに沿って、景気予想の基本線を「緩やかな成長の継続」のまま維持した。ただし、景気のリスクについて、過半数のFOMC参加者が6月見通し作成時点で下振れ方向に傾斜しているとみていたことを紹介したほか、質疑応答では「二番底(ダブルディップ)」のリスクはあることを認めた。その上で、不確実性の異例の高さと、必要に応じた追加緩和の用意にも言及したが、一般論の範疇にとどまった印象が強い。追加緩和よりも「出口」について説明している記述が、証言本体では、はるかに長かった。

 デフレのリスクについての言及も、証言本体にはなかった。質疑応答では、デフレのリスクについて、「現時点では非常に高いリスクとは考えていないが、むろんわれわれは経済と物価水準を注視し続けるつもりだ」と発言した。