第1回カンボジア大学対抗ロボットコンテスト(以下ロボコン)まで、この原稿を書いている時点で2週間を切っている。

 しかし・・・本当にこれでいいのだろうか?

「日本ほど忙しくない」状況に、かえって気持ちが焦る

 日本でこれほどのイベントの2週間前なら、打ち合わせの連続で、ほぼ毎日終電帰宅の状態のはずだ。

 勿論、残業はしている。家に帰ってからでもずっといろいろな連絡をしているし、土日も家に持ち帰って仕事はしている。だからといって、日本で経験したような「とんでもない忙しさ」とか、スタッフみんながわさわさと働いているというのではない。

 これでいいのだろうか?

 国営テレビ局の副局長、通称“松平の殿様”は確かに忙しそうだ。私が大枠のプランを考え、殿様と討議する。2人で考えたことを具体的に形に落としていくのは、すべて殿様の仕事になる。なぜなら、私はクメール語が話せないからだ。

 私が台本を書く。でもその台本は英語だ。全スタッフに理解させるにはクメール語にしなければならない。だから、それを翻訳するのも殿様の仕事になる。

 美術の担当者を呼んで、スタジオにどういうセットを組むかを指示するのも殿様の仕事だし、参加者に渡す賞状の文言を考えるのも、優勝者に渡すトロフィーに刻む文言も、すべて殿様が考えて発注しなければならない。

 なぜこんなに殿様が孤軍奮闘しなければならないかというと、カンボジアの国営テレビ局では、日本のテレビ局の中にあるような、美術部や技術部といった部署がまだまだプロとしての組織になってはいないからだ。

スタジオセット図はこんなに簡単(写真提供:筆者、以下同)

 例えば、日本でスタジオセットを組むとなると、きちんとした縮尺で作成した設計図である「青図」を引く。でも、ここではどうもそんなものは作らないらしい。

 殿様がクメール語で説明しながら、ささっと見取り図みたいなものを書く。「ここが1メートル、こっちが1.5メートル」などとクメール語で説明をする。「分かった?」と聞いているような殿様の素振りがある。担当者はうなずく。

 以上である。

 撮影技術のことで言えば、台本には当然ながら「カメラ割り」(会場にある数台のカメラがそれぞれどのようなものを撮影するか、その狙いを書き込み、予め台本上で分かるようにしておくこと)を入れなければいけない、というのが日本のスタジオ撮影の常識である。