「オバマ大統領の大使任命が、選挙献金への報償にあまりに傾きすぎる」という批判が、ワシントンで噴出してきた。

 選挙資金を巨額に寄付した実績だけで大使に任命された人物のなかには、外交の基礎知識が極度に欠ける人物もいることが判明し、嘲笑を受けるという事態なのだ。

 日本に送られてきたキャロライン・ケネディ大使も、大統領選でオバマ候補を強力に支持した功績を高く評価され、選ばれている。この論功行賞人事の論議の広がりは、わが日本にとっても他人事ではないようだ。

アルゼンチンについて何も知らないマメット氏

 オバマ大統領が自分の選挙キャンペーンで巨額の寄付金を集めてくれた人物を大使に任命して恩返しをするという人事パターンは、就任1期目に日本駐在大使としてジョン・ルース氏を選んだ頃から顕著だとされてきた。フランス駐在大使に任じられたチャールズ・リブキン氏は、2008年の大統領選挙でオバマ選対の財政委員長だった。

 2期目の今回は、外交や政治はもちろん中南米情勢にもまったく無縁の選挙コンサルタント、ノア・マメット氏がアルゼンチン駐在大使に任命された。同氏は2012年の大統領選挙で、民主党のオバマ候補に合計50万ドルの選挙寄付金を集めたバンドラー(束ね役)として名を知られていた。

 大使の任命は議会の上院で承認されなければならない。マメット氏も2月6日の上院外交委員会の公聴会に出て、証言し、議員たちの質問に答えた。その質疑応答で、同氏はまず赴任国のアルゼンチンは過去、一度も訪れた経験がないことを明らかにした。さらにはアルゼンチンを米国の「同盟国」と呼び、「成熟した民主主義国」とも評した。

 もちろんアルゼンチンが米国の同盟国であるという認識は誤りだし、完全な民主主義国家でもない。議員たちからは「ずいぶんユニークな同盟国だ」といった皮肉な発言が続出した。