学校でみんな揃って食べる給食。単なる栄養摂取だけではなく、食育や社交性を養う目的もある。
そんな学校給食が変わりつつある。合理化が進み、複数の学校の給食をまとめて調理する方式が増えてきた。さらに調理・運営ノウハウを持つ企業の参入も見られるようになってきた。学校は食物アレルギーの対応も迫られている。
変わりつつある学校給食の“いま”を見てみたい。
時代は栄養補給から食育へ
学校給食の始まりは1889年。山形県鶴岡町(現鶴岡市)で貧しくお弁当を持ってこられない子どもに無償で昼食を出したのが始まりと言われている。
全国に普及したのは終戦後。食糧難の時代、子どもの栄養不足を補うのが目的だった。1954年には学校給食法が施行され、「国民の食生活の改善」が掲げられた。この頃の給食を見ると、脱脂粉乳にコッペパン、少量のおかずがついている程度。この後、脱脂粉乳が牛乳に替わり、おかずの量が増え、内容が次第に豊かになっていく。1976年には米飯給食が開始された。
その後、社会では肥満や生活習慣病の増加、偏食による栄養のバランスの乱れが問題になってきた。2011年施行の現行法では、「食に関する正しい理解と適切な判断力を養う」とあり、食育が重視されていることが分かる。
どんな学校給食にするのかは市町村などの自治体で決めるので、特色を出すこともできる。例えば、「日本一おいしい学校給食」を目指している東京都足立区では、出来立てを提供するため各学校で調理をしている。素材にもこだわり、天然だしや薄味を基本とし、すべて食材から調理している。レシピ本も発行され(右の写真)、「低カロリーで栄養素のバランスがとれている」「材料費が安い」と好評だ。
文部科学省「学校給食実施状況等調査」によると、2012年時点で、学校給食を実施している学校は3万1419校。全国の94.1%の学校で給食が出されている。
そのうち、パンまたは米飯とミルク、おかずを出す「完全給食」の実施率は90.7%。少数だが、ミルクとおかずを出す「補食給食(0.8%)」、ミルクのみの「ミルク給食(2.5%)」もある。