NHKの籾井勝人新会長の発言が、また国際的な反響を呼んでいる。彼はあわてて撤回したが、韓国メディアはいっせいに「慰安婦はどこの国でもあった」という発言を批判する一方、大阪市の橋下徹市長は「まったく正論だ」と擁護した。

 籾井氏の発言は「韓国が戦争地域だった」とか「日本が強制連行した」という初歩的な事実誤認だが、うんざりするのはこんなつまらない問題がいつまで経っても大騒ぎになる日韓の「歴史問題」のややこしさである。ここでは、それがどこからもつれたのか、歴史を簡単に振り返ってみよう。

日本は韓国と戦争をしたことがない

 韓国人が日本に対する恨みとしてよく言うのが「日本の植民地支配で近代化が遅れた」という話だ。朝鮮半島が日本の領土だったのは1910年8月の日韓併合から1945年8月の敗戦までの35年間だが、なぜか彼らは「日帝36年」と呼んでいる。

 籾井氏はこの時期に朝鮮が「戦争地域」だったと思っているようだが、朝鮮は日本の領土だったのだから、自国と戦争することはありえない。

 北朝鮮は「金日成が独立戦争で朝鮮を植民地支配から解放した」と言うが、抗日パルチザンがいたのは満州で、朝鮮半島では戦いは起こっていない。唯一の民族独立運動は1919年の「三・一事件」だが、これは数カ月で終わった大衆デモで、内戦とは言えない。

 そこで韓国では、日韓併合の前の大衆運動を「独立戦争」としているようだが、この時期にはすでに日本の支配権は確立し、大韓帝国は日本の保護国だった。韓国併合条約は両国の合意の下に平和的に調印された正式の外交文書で、各国にも承認された。