昨 (2013)年12月17日に「国家安全保障戦略」(以下「戦略」と略称)と「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱」(以下「大綱」と略称)と「平成26年度~平成30年度・中期防衛力整備計画」(以下「中期」と略称)が同時に閣議決定された。
これら「戦略」「大綱」「中期」を通して読んでみると、それぞれの内容に、国民の理解し難い問題点がいくつかあり、さらに3点セットの間に平仄の合わない部分も発見される。
既に決定され修正できないものではあるが、今後の運用と国民の理解のために、以下、特に気がついた点を述べておきたい。
1. 国家安全保障戦略について
(1)本「戦略」は「国防の基本方針(昭和32年)に代わるもの」と説明されている。しかし、元々「国防の基本方針」は戦略とは言えないものであったのだから「代わる」という表現には違和感を覚える。ここはあくまでも「国防の基本方針は廃止」とすべきであった。
(2)「国防の基本方針」は事実上廃止としたものの、「その他の基本方針(1-専守防衛 2-軍事大国とならない 3-非核三原則 4-文民統制の確保)」は不変である。
「国防の基本方針」無用化の原因である近年の情勢変化が、なお「その他の基本方針」を変更させない理由が不明である。まずは「専守防衛」「軍事大国」とは何か、の説明が必要ではないか。
(3)安全保障環境について、「大量破壊兵器等の拡散」と「国際テロ」の2つを「脅威」とし、「グローバルコモンズ」と「グローバル経済」については「リスク」とし、「人間の安全保障」については「課題」と分けて表現した真意が、読者には分からない。
また、昨(2013)年6月の「自民党・新防衛大綱提言」では「テロ・ゲリコマ」と表現していたものを「国際テロ」に絞り、その対策として情報収集・分析強化には触れたものの、対応行動については全く述べていない、これはなぜか。さらに中国自身が自認する三戦(世論戦、心理戦、法律戦)に全く触れていないことも理解できない。