この原稿を書いている時点で、カンボジア初の大学対抗ロボットコンテスト(以下、ロボコン)まであと2カ月少し。それなのに、肝心の参加学生たちがロボットを作るためのパーツがまだ届かない。

 昨年末に届いている前提でもろもろの予定を組んだため、一番確実と思われた日本で購入、送付という手段を取ったのに・・・である。こちらから取りに行くわけにもいかず、こればっかりは待つしかない。

当初はロボコン参加を断った、誇り高き「カンボジアの東工大」

 こうなったら、パーツ到着が遅くなっても、大会全体のスケジュールを変えずに、どうやって間に合わせるかを考えるしかないのだが、正直、自分でロボットなんか作ったことがないので、ロボットを作るのにどのぐらい時間がかかるのか、そしてその検証の時間をどのぐらい見ておけばいいのか、全く見当がつかないのである。

 それでいながら、参加大学からは「いつパーツが届くのか?」と催促が来る。こっちだって、いろいろな広報をする都合があるし、各大学がロボットを作っているドキュメンタリー映像を押さえて事前にロボコンの宣伝のための番組を作ろうとか、ロボコン本番のスタジオに映像を流したいと思っているから、早く学生たちに作り始めてほしい。

 それで、ロボコンの専門家である平松さんにお尋ねしてみる。すると、平松さんはこう言うのである。

 「待つしかないよねえ。来た時に考えようよ」

 本当に、平松さんがこういう人で良かったのだ。私と一緒に気を揉むタイプの人だったら、私なんかきっと頭がおかしくなっていただろう。それにしても着任10カ月にして、平松さんもかなりの「カンボジア化」である。

 ところが、「カンボジア化」していない参加校があったのだ。「カンボジアの東工大」、ITC(カンボジア工科大学)である。

 最初に「ロボコンやるから出場しませんか?」と声をかけた時に、「ロボットなんか、もううちは作ってるから出場しません」と断られ、後になって参加を表明した、あの富士山のように誇り高いITCだ。

 ITCはパーツの催促を何度もしてきたばかりか、我々がドキュメンタリーの取材を依頼したところ、「どうぞ取材でも何でも来てください」と二つ返事で引き受けてくれた。

 相当な自信なのである。

 しかし、パーツもないのに、どうやっているのだろう? と訝りながら、我々国営テレビ局のクルーは、ようやくロボコン参加校ドキュメンタリーのクランクインを迎えたのである。