日本企業と中国企業が互いに連携することはもう不可能なのか――。

 1月8日、日本経済新聞の記事に思わず目を奪われた方々も少なくなかったのではないかと思う。「『協力できない』中国6割」という見出しの記事は、国家間の政治状況を切り離して相手国企業と連携できるかを経営者に問うアンケート結果を伝えていた(アンケートは安倍晋三首相が靖国神社に参拝する前に実施されたもの)。

 記事によれば、中国の経営者の6割は「政治と切り離すのは難しく、協力できない」と回答していた。それに対して、日本企業は約8割が「協力できる」と回答した。

 中国企業は日中間の政治のこじれが「経済にも影響する」と確信し、それに対して日本企業は「そうではない」と受け止めている。この結果が示唆するのは「中国側の悲観」であり、「日本側の楽観」でもある。

日本の情報収集に貪欲な中国人

 その違いを生じさせる要因として、「情報量」の違いが考えられる。

 昨今、中国での日本批判はエスカレートする一方だ。中国中央テレビでは、毎日、国民が就寝する前の数十分を必ず日本バッシングに費やす。連日これをやられれば、「日本は打ち負かすべき悪の帝国主義」というイメージが否が応でも定着する。プロパガンダで洗脳されたのは中国人ビジネスマンも例外ではなかったということだ。

 日本ではここまでの過剰な洗脳はない。だが、それにしても中国情報が少なすぎる。限られた数のテレビチャンネル、限られた数の紙媒体、固定化されたアングルによる中国情報は、量、質ともに十分な情報だとは言えない。その結果、情報の偏重はあるにせよ、中国人が知る日本事情よりも、日本人が知る中国事情は乏しいものになる。

 また、革命の歴史に翻弄された中国人にとって情報の有無は死活問題である。戦後の安定した環境になじんだ日本人、あるいはサラリーマン社会に漬かる日本人と比べ、中国人の情報収集意欲は極めて高い。

 そして決定的な違いがある。例えば日中ビジネスに携わる中国人経営者はほぼ完璧な日本語でダイレクトに情報収集ができる。しかし、日本人経営者が中国語の情報を収集するのは困難だということだ。