東京都知事選に、元首相の細川護熙氏が「脱原発」と「東北での五輪マラソン」を掲げて出馬するという。細川氏は過去の政治家で、最近は陶芸家として評価を得ていたので、政治評論はしても、まさか政治家に復帰するとは思えなかった。とはいえ、原発は、膨大な電力の消費者である都民も真剣に議論すべき問題であり、東北五輪マラソンについても、被災地の風化を考えるきっかけになるかもしれない。細川氏の芸術的センスは分からないが、政治的なセンスは衰えていないと思う。

 東北から見れば、東京は身勝手な存在だ。東京電力の供給地でもない福島県に、いくつもの原発を建て、電力だけはしっかりと得ている。事故が起きれば、被害は地元に押し付け、それにかかわる費用は国民の税金で肩代わりをさせている。

 原発は国政の問題で、都政の問題ではない、という意見があるが、これも身勝手な意見だ。エネルギーの地産地消を考えるのは、都民の義務だろう。

 私が教えている学生に、正月は実家に戻ったのかと尋ねたら、「親から来るなと言われた」とのこと。理由を尋ねたら、実家は福島県楢葉町で、「避難指示解除準備区域」。親は会津若松市の仮設住宅で文字通りの仮住まい。同居していた祖父母は別の地域の仮設住まい。これでは一家そろって正月を祝う気分ではないだろう。

 多くの人々に迷惑をかけているという思いが都民にあるのなら、太陽電池でも燃料電池でも、都民による発電に都の補助金を乗せて、東京電力の原発の1個分でも、自分たちで稼いではどうか。都知事選挙は、そんな議論をする絶好の機会だろう。

IOCが承認すれば東北マラソンは実施できる

 東北五輪マラソンも、ぜひ実現してほしい。被災地には知らん顔で、オリンピックの祭りを自分たちだけで楽しもうという発想は、原発の地方への押しつけと同じ構造だ。

 オリンピックは、国家ではなく都市が開催するのだから、開催する都市以外で競技をするのは難しいのではないか、という意見もある。しかし、オリンピック憲章の34項(オリンピック競技大会の開催地、会場)は下記のようになっている。