2013年12月17日、モスクワで、ウクライナ・ロシア政府間協議が開かれ、天然ガス価格の値下げなど、数々のロシアによるウクライナ支援策が打ち出された。
ウクライナは11月21日、EU(欧州連合)との連合協定(Association Agreement)交渉を「ロシアやCIS諸国との貿易が激減している」などを理由に打ち切り、11月28~29日開催のEU東方パートナーシップ・サミットにおける調印を自ら閉ざしたばかりである。
ウクライナ経済が低迷しデフォルト危機が囁かれる中、ウクライナ政権は、EU加盟という不確定な将来の夢より、ロシアが差し出す目の前の実利を拾う形になる。
ウクライナ経済を救うロシア?
ロシア政府の支援は多岐にわたっているが、2014年初からの天然ガス価格の引き下げ(268.5ドル/1000m3)、そして国民福祉基金による150億ドルのウクライナ国債(利率5%)引き受けが目を引く。
なぜなら、ロシアの支援策は、ウクライナ政府の危機感に応えるものであるからだ。2013年9月に米国の大手格付け機関、ムーディーズから国債の格下げをされたように、ウクライナ経済の状況は芳しくない。
国内総生産(GDP)成長率は2012年度の0.2%から2013年度にはマイナス1%台へ転落することが確実視されている。
アザロフ・ウクライナ首相は、12月13日に国内で開かれた円卓会議において、「金融を含む国際市況の悪化、伝統的なパートナー諸国との貿易減、ガス価格の高騰」を経済低迷の主因とした。以下、アザロフ報告内の注目点を挙げてみる。
●EUと自由貿易圏が締結されれば、(ロシア・ベラルーシ・カザフスタン)関税同盟・ウクライナ間の自由貿易体制が失われる。
●上10カ月で貿易額は前年比マイナス9.4%の中、対ロシアはマイナス17%、対CIS諸国全体でもマイナス16%と際立った低迷を記録。
●ガス価格高騰により、外貨準備を切り崩して支払いに充てることを余儀なくされている。
●EU諸国との貿易赤字100億ドル、関税同盟諸国との貿易赤字150億ドル、2014年度の対外債務償還55億ドル、天然ガス支払額100億ドルの合計405億ドルが必要だが、現在、外準残高は190億ドルしかなくデフォルトの危険性がある。
●国際通貨基金(IMF)は、住民向け公共料金の40%値上げなど、ウクライナにとって厳しい融資条件を課している。
12月23日には、「EUとの連合協定調印の延期に関する損得勘定」なる2014年度の経常収支試算が政府により公表された。それによれば、EUとの連合協定に調印した場合、関税同盟諸国との貿易赤字が進行する等でマイナス369億ドルの損失、調印延期(およびロシアからの支援)の場合は関税同盟諸国との貿易赤字が緩和され天然ガス支払額が減るうえにロシアからのクレジットにより、51億ドルのブラスになるという。
要は、EUとの連合協定調印によって予測される短期的な貿易減に、現在のウクライナ経済は耐えられなく、ロシアにすがりリハビリに努めよう、ということである。