防空識別圏を突然発表した中国が、新たな航空母艦の配備によって、尖閣周辺を含む東シナ海上空での空軍力をさらに増強することが確実となった――。

 米国側の新情報で明らかになったのは、中国空母の新建設と追加配備の展望である。日本の安全保障にも重大な影響を及ぼすこととなりかねない。

 中国の防空識別圏の設置というのは、日本の尖閣諸島の領土や領空を一方的に中国圏に含もうとする挑戦的な軍事措置である。日本に尖閣諸島を放棄させようという戦略意図を持った威圧の手段だろう。中国のその対日威圧作戦については前回の当コラムで報告した。

「遼寧」から飛び立つ戦闘機群が東シナ海に

 さて、この防空識別圏をめぐって改めて懸念されるのは中国の軍事力の増強である。特にその空軍力が脅威の主体となる。

 その点で、中国海軍が最近、新配備したばかりの航空母艦「遼寧」の動向が気がかりとなる。この空母は旧式で機能は低いとはいえ、中国人民解放軍では初の本格パワープロジェクション(遠隔地への兵力投入)能力を誇示する。この空母からは艦載機が自由に飛び立てるのだから、尖閣諸島の近くでの中国の空軍力が増強されることにもなる。今回の防空識別圏の宣言とも密接な関係がある動きなのである。

 中国は旧ソ連のウクライナから1998年に購入した航空母艦「ワリヤーグ」(6万7000トン)を長年の大改装の末に「遼寧」と命名し、2012年9月に実戦配備した。「遼寧」は艦載機のJ-15戦闘機の発着も可能であることを実証し、2013年11月には海南島の基地を出て、台湾海峡を通り、南シナ海へと向かった。南シナ海での初の空母配備は11月26日に中国当局が公式に認めている。

 中国軍のこの初の空母の戦闘能力について、米海軍の当事者らは「極めて低い」と評している。「遼寧」は米軍の近代的な空母や戦闘機にはあらゆる面で劣っており、いざ戦闘となると、格好の標的になるという。