スペイン・マドリードのファッションショーで、痩せ過ぎのモデルが出場を禁止されたというニュースを覚えている方もいるのではないだろうか。これは、2006年にブラジル人モデル、アナ・カロリナ・レストンさんが、拒食症が原因で死亡したことをきっかけに痩せ過ぎモデルについての議論が高まったことに始まる。

 それ以降、スペインだけでなく、イタリアでも、「痩せ過ぎモデルは少女たちに“細い=美しい”という誤った認識を与える危険性がある」として、BMI(体重[キログラム]を身長[メートル]の2乗で割った体格指数)が一定の値以下のファッションモデルのファッションショー出演の禁止に踏み切った。

 ただし、これらは、当局がデザイナーやカメラマン、ファッション雑誌出版社にモデルに関するルールを厳守するように勧告する形であり、法令のような絶対的な効力はない。また、太れない体質のモデルもいることから、彼女たちへの差別ともなり得ると、賛否両論である。

 そうしたなか、2013年、イスラエル国会は、痩せ過ぎと判断されたファッションモデルを広告に使うことを禁じる法律を制定・施行した。

 同法は、BMIが18.5以下の痩せ過ぎのモデルを広告モデルに採用することを広告会社に対して禁じたほか、痩せて見えるように画像を加工した場合、その旨を広告に明記するよう義務付けた。

 このように、痩せ過ぎモデルが、少女や一般女性の痩せ願望を助長し、また拒食症などの摂食障害に発展しかねないと、痩せ過ぎに関する問題は海外ではしばしば議論されてきた。

 一方で、日本でも痩せ過ぎモデルに関するニュースは取り上げられているものの、海外と比べると一般的な関心が低く議論は真剣にされていないのではないだろうか。今回は、日本の一般女性の痩せ過ぎについて考えたい。

痩せ過ぎ女性の比率は発展途上国並みの日本

 細身の女性を魅力的と感じる人、ぽっちゃりの女性を魅力的と感じる人、人それぞれ好みがあるだろう。しかし、日本人の思い描く“ぽっちゃり”は欧米諸国など他の先進国と比べると、標準か痩せ気味であること、日本は他の先進国と比べ痩せ過ぎの若い女性が多いことをご存じだろうか。

 多くの場合、痩せ過ぎとはBMI18.5未満のことを指すが、これはどれくらい痩せているのだろうか。例えば、BMI18は、身長160センチで体重46.1キロである。

 総体的に見ると、食糧事情などの理由から、所得(1人当たりのGDP=国内総生産)の低い貧困国では痩せ過ぎの女性が多いという統計がある。WHO(世界保健機構)の「Global Database on Body Mass Index」によると、BMI18.5未満の女性が全体の30%以上を占める国は東ティモール、エリトリア、インド、パキスタン。続いて、20%以上の国もバングラデシュ、ベトナムなどの発展途上国において痩せ過ぎ女性が多い。