海を越え、国境を越えて――。海外に向かう移民や出稼ぎ労働という言葉から、読者は何を思い起こすだろうか。
現在、世界的に国境を越える労働者の移動が活発化しており、医療・介護分野もこれと無縁ではない。米国や欧州、中東地域は海外から多数の医療・介護労働者を受け入れてきた一方、フィリピンのように世界へ医療・介護労働者を送り出す国もある。
外国人労働者が出稼ぎ先で看護や介護の仕事に就き、その地の医療・介護を支える構図が指摘できる。そんな中、人材の新たな送り出し国になる可能性を持つのが、ベトナムだ。同国は今、日本やドイツへの医療・介護労働者の送り出しに踏み出している。
インドネシア、フィリピンに続きベトナムから専門人材を受け入れる日本
現在、ベトナムをめぐり大きく注目されているのが、日本との経済連携協定(EPA)に基づく日本への看護師・介護福祉士候補者の送り出しだ。2014年にはベトナムから最初の候補者の来日が予定される。
日本はこれまで、インドネシア及びフィリピンと結んだ各EPAに基づき、両国から看護師・介護福祉士候補者を受け入れてきた経緯がある。これをさらにベトナムにも広げることになる。
3カ国からの受け入れで、鍵となるのが「専門人材」の受け入れという点だ。日本はかねて、海外からの単純労働者の受け入れに慎重だからだ(研修生制度などにより実質的には単純労働者を受け入れているとの指摘もあるが、ここでは触れない)。
厚生労働省の資料によると、ベトナム人の看護師候補者は、3年制または4年制の看護課程を修了するとともに、ベトナムの看護師国家資格を保有し、2年間の看護師実務経験を持つことが要件となっている。また、介護福祉士候補者は3年制または4年制の看護課程を修了していることが条件だ。
つまり日本は専門的な知識・技能を持つ人材を受け入れることになる。こうした条件は、インドネシアやフィリピンからの看護師・介護福祉士候補者の条件とも重なる。
日本語能力試験「N3」取得が訪日要件に
一方、ベトナムからの受け入れでは、従来のインドネシアとフィリピンからの受け入れとは大きく異なる点がある。それは、日本語能力試験「N3」(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができるレベル)に合格することが訪日要件となっている点だ。