米マイクロソフトが初めて本格的に携帯電話ハードウエアの設計を手がけたという「キン(KIN)」。この5月に米国で発売されたばかりだったが、突如として事業の中止が決まった。
キンは米携帯キャリア1位のベライゾン・ワイヤレスが販売しているが、在庫がなくなり次第販売を中止する。欧州では英ボーダフォン・グループが今秋発売する予定だったが、こちらも計画を取りやめるという。
端末値下げの直後だった
開発に2年の歳月をかけ、膨大な広告費もかけて若者層を狙ったマイクロソフトの独自携帯だったが、発売からわずか48日間、あっけない幕引きとなったと欧米のメディアが伝えている。
この携帯電話は、小型の「KIN ONE」とワイドススクリーンの「KIN TWO」の2モデルがある。いずれもタッチスクリーンとスライド式のキーボードを備えており、ソーシャル・ネットワーキング・サービスなど若者向けに特化した端末だ。
大規模なキャンペーンを展開したが売れ行きは芳しくなかったようで、ベライゾンは同じ週に端末の大幅値下げを発表していた。
マイクロソフトの動向に詳しい米Windows IT Pro誌のポール・スロット氏によると、ベライゾンはキンに高額なデータプランの加入を義務づけているため、たとえ端末価格を引き下げてもターゲット層の8~19歳には購入できない。
また従来の多機能携帯電話とスマートフォンの中間のような製品で、その位置づけが曖昧なため消費者に訴える力がなく問題を抱えていたと指摘している。
マイクロソフトの消費者部門は混乱している?
米ニューヨーク・タイムズによると、米フォレスター・リサーチのアナリスト、チャールズ・ゴルビン氏は「完全に戦略の失敗だ」と語っている。
同氏によると、マイクロソフトは新製品に執着する企業で、たとえ出足が芳しくなくても何度も改良を重ねていく。それがこれまでの同社のスタイルだという。今回のようなあまりにも素早い撤退は意外だったと同氏は驚いている。
しかしこれは、マイクロソフトの消費者製品部門が混乱していることの表れだとニューヨーク・タイムズの記事は指摘している。