北朝鮮の金政権の崩壊の確率が高くなってきた。このため米国と韓国は北朝鮮への軍事介入を前提とする人道的援助、北の大量破壊兵器の確保あるいは破棄、中国の軍事介入の可能性への対応などを、現実に起こり得る展望として準備し始めなければならない――。
このような予測と提言が米国の大手研究機関「ランド研究所」から発表された。北朝鮮政権が崩壊する過程では大規模な軍事衝突も予測され、日本も直接的な影響を受ける可能性があるというのだ。
金正恩が暗殺される可能性
カリフォルニア州に本部、ワシントンに支部を構えるランド研究所は、長年、国防総省から研究を委託されてきたことなどで知られ、軍事や戦略の調査、分析で高い評価を受けてきた。
そのランド研究所がこの10月に「北朝鮮崩壊の可能性に備える」と題する研究報告を公表した。合計340ページに上るこの報告は、朝鮮半島の安全保障などを専門とするブルース・ベネット研究員らを主体に作成された。
同報告でまず注視されるのは、「(北朝鮮の金正恩政権が)今後数カ月、あるいは数年のうちに崩壊する確率がかなり高い」という大前提を打ち出し、「その崩壊は実際に起きるか否かではなく、いつ起きるかを考えるべきだ」と断じている点だろう。より具体的には、同報告は「金正恩が暗殺され、党や軍が内部分裂して内戦となる可能性」を挙げていた。
ただし米国では、北朝鮮の国家や政府の崩壊は1990年代から何度も予測はされてきた。例えば1994年に北朝鮮の核兵器開発が確認され、その動きを阻止するための米朝枠組み合意が成立したときも、米側ではすでに「北朝鮮政権はやがて必ず崩壊するから、北への一時的な譲歩も問題はない」とする意見があった。
その点、今回のランド報告は、つい最近まで在韓米軍司令官を務めていたウォルター・シャープ将軍の公開の場での証言を指針の1つとして提示していた。その証言とは以下のようなものである。
「北朝鮮では破滅的な中央統制経済、老朽化した工業セクター、欠陥だらけの農業基盤、栄養不良の軍人や国民、そして核兵器開発プログラムを強行に推進することなどにより、最高指導部の突然の激変はいつ起きても不思議はない。またそうなった場合の混乱は想像を超えるだろう」
北朝鮮国民への人道的援助が必要に
今回のランド研究所の報告は、北朝鮮政権崩壊までの実際のシナリオを詳述することよりも、崩壊という事態が起きた際に、米国政府が韓国政府の協力を得てどのように対処すべきか、そのためにどんな準備をしておくべきかの考察に重点を置いていた。