黒川清・日本医療政策機構代表理事監修

1. 北欧モデルの実際

 福祉、医療、社会保障の先進国―――。そんな形容句と共に紹介されることの多い北欧諸国。特にスウェーデンの社会保障政策は日本でも言及されることが多い。では、実際のところどうなのか。どんな政策が日本の参考になるのだろうか。

 本シリーズでは、これまで「国民の健康を考える」と題して、様々な視点から医療政策、健康政策について議論してきた。前回、オランダの医療保険制度改革を紹介したことに続き、これから2回にわたり、スウェーデンの医療制度を概観してみたい。

 第1回の今回は、その制度の概要を述べ、第2回では、特に日本にも示唆となり得る医療ITの活用と、高齢化対策について見ていく。

2. 国と地方自治体

 スウェーデンの医療と保健を担う機関は、国(社会保健省)、ランスティング、コミューンの3つである。社会保健省は医療保健政策全般の責任を負い、管轄下にある保健福祉庁はすべての医療従事者・医療機関の監督や、医療の改善等を行っている。

 ランスティング(Lansting; County council)とは、日本の県に類似した広域自治体であるが、行う業務は保健医療サービスの提供を中心とした限定的なものである。全国に18のランスティングがあり、6つの地域グループとも呼べる保健医療圏にいずれかに所属する。

 また、コミューン(Kommun; Municipalities)は全国に290ある基礎自治体だ。日本の市町村に相当するが、ランスティングとは対等な立場であり、強い自治権を持つことが日本とは異なっている。

 ランスティングが医療機関の整備等の保健医療サービスの責任を担うのに対し、コミューンは住民への援助・支援の提供に責任を持ち、高齢者や障害者の介護サービスを含む福祉サービスを行っている。