この9月にミャンマー東北部を訪問する機会を得た。バンコクから飛行機でマンダレーに行き、そこから、援蒋ルート(重慶の蒋介石政府に対して英国と米国が軍事物資を運んだ道路)を車で移動した。

 東方地域はシャンと呼ばれ、シャン族が居住する。一時、シャン族は中央政府と対立して武力衝突もあったとされるが、現在、ほぼ平和が保たれている。旅行中、身の危険を感じたことはなかった。

 ただ、援蒋ルートから外れた山岳の道に入ったとき、分隊規模(8人程度)の完全武装した軍人に3度ほど出くわした。筆者はこれまで、アジアやアフリカで、カービン銃を持ったガードマンをホテルや銀行の入り口で見かけたことはあったが、道で完全武装した集団に出くわしたことはなかった。それだけ、この地域の治安は不安定なのだろう。

ミャンマー人をいとも簡単に騙す中国人

 そんなシャンで、現在、トウモロコシの生産が急増している。トウモロコシの生産量が増え始めたのは、ここ3年ほどのことと言う。そして、生産されたトウモロコシは100%中国に運ばれている。

 中国において食肉需要が増大し、それを支えるために飼料トウモロコシの生産が増えた。ただ、現在、ほぼ全ての人が十分な量の食肉を食べるようになり、トウモロコシ需要もほぼ天井に達した感がある。それなのに、なぜミャンマーから中国にトウモロコシが運ばれているのであろうか。

 それは、中国の農民が熱心にトウモロコシを作らなくなったためだと言う。ここ20年ほど、中国政府はGDPを伸ばすために過剰な公共投資を行ってきた。それが、近年、ミャンマーと国境を接する内陸部の雲南省にまで及んできた。

 雲南省でも土木作業員の賃金は急上昇して、日本円にして月に3万円から4万円になっている。これは数年前の約3倍だ。そして、公共事業の現場で働いているのが農民なのだ。高給の職場が近隣にできたために、農民はトウモロコシの生産に力を入れなくなったと言う。そのために、現在、減少分を隣国のミャンマーから輸入している。