MRIC by 医療ガバナンス学会 発行

 「私は、みんなと同じようにしか食べていないのにすぐ太る。余分な脂肪を減らしたい」と悩んでいらっしゃる方はいませんか? 今回は、その「脂肪」についての話題です。

 まず、私たちの体にある「脂肪」のすべてが悪いわけではありません。脂肪細胞には、「白色脂肪細胞」、「褐色脂肪細胞」、そして「ベージュ脂肪細胞」があります。それぞれの特徴を整理してみましょう。

白色脂肪細胞

 下腹部、背中、太もも、お尻、腕や内臓の周りなど、全身のあらゆるところにあります。食事によって過剰になった脂質や糖は、中性脂肪の形で「白色脂肪細胞」に取り込まれます。

 「白色脂肪細胞」は、風船のように膨らんでエネルギーの貯蔵庫となります。私たちが飢餓の状態を乗り越えるために、必要なシステムなのです。

 さらに、「白色脂肪細胞」は、レプチンなどのホルモンを分泌し、Bmal1(ビーマルワン)と呼ばれる体内時計を調整する時計遺伝子の発現など、様々な機能を有することが分かってきました。

褐色脂肪細胞

 その名の通り褐色で、白色脂肪細胞より小さく、中に含まれるミトコンドリアには、「UCP1」というタンパク質が多く発現しています。このUCP1が熱産生を高め、脂肪が燃されエネルギーに変えられます。

 ですから、褐色脂肪細胞が多い人はエネルギー代謝が高く、太りにくいのです。「褐色脂肪細胞」は、肩甲骨、首筋、心臓、腎臓の周りなどに存在します。

 また、褐色脂肪細胞が脂肪を燃焼させて、体の熱を生成し、体温を維持するので、赤ちゃんや冬眠する動物に豊富です。

 しかしながら私たち人間は、成長とともに「褐色脂肪細胞」の数や機能が低下します。ただし成人でも、寒冷刺激などで、「褐色脂肪細胞」を活発にすることはできます。

 そこで最近、この「褐色脂肪細胞」が、肥満やメタボリックシンドロームの新しい治療のターゲットとして期待されています。