黒川清・日本医療政策機構代表理事監修
前回、日本の中高年男性と若者の自殺の主な原因・動機の1つとして、失業や就職難などの経済・生活問題に注目した。しかし、経済・生活問題を主な動機として自殺し亡くなった人々にとっても、それが唯一の動機ではないようだ。
例えば、自殺者数が急増した1998年を見ても、自殺の主な原因・動機として、健康問題など、経済・生活問題の他の問題も増加している。
これは、経済・生活問題と他の問題の間に相関関係があることを示唆する。今回は、経済・生活問題を取り巻く様々な要因に焦点を当てて考えてみる。
主に4つの危機要因が存在する
NPOのライフリンクの調査によると、自殺の危機要因は平均して4つあり、それらが複雑に連鎖しているという(図1)。
これは、合計1000人の自殺者の遺族や友人へのインタビュー解析によって明らかになったものだ。
例えば、図1の「失業」を例に見ると、失業後、非正規雇用となり生活苦を強いられ自殺するパターンや、失業以前に身体疾患を患っていたが、失業により身体疾患だけでなくうつ病も患い自殺するパターンなど、さまざまである。
つまり、失業者や就職失敗者に、就職支援をするだけでは有効な自殺対策とは言えない。