バンクーバー新報 2013年8月15日第33号

 愛嬌いっぱいに日本語と英語で落語を披露する生粋のカナダ人落語家がいる。桂三輝(かつら・サンシャイン)さんは、現在上方落語界でただ一人の外国人落語家だ。その三輝さんが8月末から10月5日の期間に北米25都市を回る。

特製の着物で公演することも

 トロント出身で劇作家だった三輝さんが桂三枝(2012年に6代目桂文枝を襲名)の名で知られる落語家のもとに弟子入りを果たし、下積みを経験して桂三輝の名を手にしたのは6年前。

 今は日本内外で落語を演じてきた彼の姿をYouTubeでも数々目にすることができる。

 日本人の振る舞いと落語のスタイルを熟知した演じっぷり、外国人の視点による、彼ならではの創作落語の面白さ――独自の魅力を放つ三輝さんに、落語家になるまでのいきさつや、今回の公演について話を聞いた。

――カナダでは劇作家、作曲家として活動していた三輝さんが、日本に関心を向けたきっかけは何ですか?

 カナダで作っていたミュージカルは古典ギリシャの喜劇を翻訳した作品でした。その古典ギリシャの作品と日本の能楽や歌舞伎がたまたま似ているということを、ある論文で読みました。それがきっかけだったんです。

 歌舞伎をちょっと勉強しようと思って、ワーキングホリデービザで日本に来て、日本の文化を学びながら、大学で演劇を教えていました。そして初めは6カ月の滞在のつもりが、今では14年になってしまいました。

――落語のどんなところに魅力を感じたのですか?

 着物を着て、座布団に座って、扇子と手ぬぐいしか使わず、このシンプルな形でお客様の想像力を借りて面白い世界を作るのが素晴らしいと思いました。

 そして伝統もあり、演劇の部分もあり、コメディーでもありと、落語に出合うまでに私の興味のあったこと、愛していたことのすべてが落語の中にあったのです。